海と向き合って生きる。(石巻・日和山)

石巻の中心商店街と海をへだてるようにそびえている小高い丘…日和山(ひよりやま)に連れて行ってもらいました。山頂には神社があり、市民の憩いの場になっているようです。昔は松尾芭蕉もやってきたというし、今はボランティアも休憩しにくるのです。石巻の市街地全体が、よく見渡せます。神社は平安時代からの由緒があるようで、海を向いて鳥居が立っています。
東北の太平洋側では海岸線は真東に向いていますから、太陽は海の真正面から上ります。天気のいい日の夜明けに来たら、さぞ神々しいでしょう!このしつらえを見て思ったことは、石巻の新しい市街地がこれまでと同じ低地に再建されるにせよ、高台に上るにせよ、やはりここでは海と向き合って生きていくことは、変わらないのだろうということです。それは富士山のふもとに暮らしている人が、富士を見て暮らすのと同じようなことです。

鳥居から海のほうを見おろすと…津波で一切合財をさらわれた、海沿いのエリアが見えます。がれきの撤去はかなり進んだとのことですが、建物はわずかしか残っていません。ここに町並みが広がっていたことを思うと…元の状態をリアルで見ていないので実感がわかないのですが…言葉が見つからないという言葉しか…見つかりません。ここで亡くなった方も、この山に逃げて助かった人も、大勢いたのでしょう。しかもここから見はらせる景色は、今回の震災の被害の、ほんのごく一部でしかないのです。震災前の同じ場所から見た動画がYouTubeにありました。
芭蕉の時代以降にも、三陸地方は何度となく津波を経験し、それでも人々はこの丘に上って太陽を背にした海と向き合ってきました。恐ろしさや悲しみを乗り越えて、石巻の皆さんがこの丘から海の美しさを感じられる日が来ることを祈りたいと思います。

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

好評発売中!

CITY LIFE刊のムックガイド。「歴史文化」「まちづくり」の取材が丁寧で大充実。「北千里を歩く象」の記事で協力しました。こちらから購入できます。

好評発売中!

樹林舎刊の写真集『吹田市の昭和』の千里ニュータウン部分を中心に、コラム執筆や写真のアレンジ、事実関係の確認などを担当しました。限定1,500部。書店でお申し込みください。

好評配布中!〔無料〕

千里ニュータウンの最新状況がわかる「千里ニュータウンマップ2018」の制作をお手伝いしました。このマップは南千里駅前の「吹田市立千里ニュータウン情報館」で配布しています。2013年版も在庫があります。

好評発売中!

吹田市立博物館とパルテノン多摩の2018年共同企画「ニュータウン誕生」の展示・図録制作をお手伝いしました。図録購入(吹田版)はこちら。多摩版はこちら。(内容は同じです)

アーカイブ

ページ上部へ戻る