徘徊老人保護

けさ、家の前の灼けたアスファルトの路上で、お年寄り(男性)が倒れていました(横座りでしゃがみ込んでいたと言うか…ケガをしていたのではありません)。手に持っているのは500円玉だけ。クルマで通りかかった人が体を起こして一生懸命話しかけていましたが、さっぱり要領を得ません。ご近所の人がお年寄りの家を知っていて電話してくださったのですが連絡が取れず…。僕も話しかけましたが言葉が全く聞き取れず、自分で歩けるようではありましたがすぐに道に座り込んでしまい、気候が良ければともかく、炎天下の路上で放置しておくのは非常識だと思いましたので、クルマで通りかかった人と一緒に北千里駅前の交番へ…。
そのあとご近所などから聞いた話では、前からときどき徘徊していて、何度も警察の世話になっているとのこと…。一度などはバス道路に座っていて、バスに保護されて交番に行ったこともあったそうです。同居している子供さんは仕事があり、自治会も加入していず、「放っておいてください」と言われるので困っている…とのことでした。
これも千里ニュータウンの現実です。この話は「特別な話」なのか…?いえ!町の人たちと話していて思うのは、高齢化率が恐ろしい速さで上昇しつつあるという現実を、見て見ぬふりをしようとしている人が、あまりにも多いのではないか?特に千里ニュータウンの場合、人口の山はいま60代後半あたりにあり、まだまだ元気で時間もある「前期高齢者」が、なんとか「後期高齢者」を支えて町の元気を保っているのが現実です。しかしあと10年もたてば、この「人口の山」がどっと後期高齢者に移動し、その頃には前期高齢者がガクンと減ってしまう…。そうなったら、誰が大量の後期高齢者を支えるのか?ニュータウンの年齢構成は、普通の町より極端なのです。ときどき「家の近くに特養ができるのは嫌だ」とか「老健は嫌だ」とか「介護施設は嫌だ」とか言う人がいますが、そういう人は自分は永遠にトシをとらず要介護にもならず、家族が世話を見てくれると、本気で信じているのでしょうか?老人問題は皆の未来の問題なのに…。
「今が良ければいい」「自分が良ければいい」…皆がそんなことを思っていると、千里ニュータウンは間違いなく滅びます。きょうの記事には、つける画像はありません。
※昨年の敬老の日前後に書いた、こんな記事こんな記事もどうぞ…(「後期高齢者」っていう単語が、こんなに話題になるとは思ってなかった頃に書いたのですが…)

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コメント

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  • コメント (4)

    • みっちゃん
    • 2008年 7月 27日

    奥居武さん、暑い中人助け、お疲れ様でした。
    このブログに、特養に入所したみんながにっこり笑った顔の写真が出せるといいのにね。
    だけど施設に入った方は、なぜか寂しそう。
    在宅高齢者も、家族に介護放棄されたら一人で生きていくのが大変。地域で高齢者を支えることには限度があります。
    住み慣れた地域で最後まで暮したいなんて、夢のまた夢?

    • 奥居武
    • 2008年 7月 27日

    これからまだまだ増える要介護高齢者の面倒を、どうやってより少ない数の下の世代が見ていくのか…?施設信用できない、地域限界ある、家族も限界あるとなったら、八方ふさがりです。高齢者を大人がほったらかしてたら、若者だって「こんな勝手な大人の言うことなんか…」と希望が持てなくなるでしょう。だから高齢者問題は若者問題でもあるわけです。未来予測の中で人口変動は「一番当たる確率が高い予測」だそうなので、じゃあちゃんと数字を読んで考えようよ、ってことですね。あまり立派なこと言えたガラじゃないのですが、灼けたアスファルトの上に横たわるお年寄りを見たら、さすがにあわてて、うろたえて、「どうして?」と考えてしまいました。

    • お-ぼら
    • 2008年 7月 29日

    老健(介護老人保健施設)とか特養(特別養護老人施設)に入る資格のある人はそれでもまだマシ。糖尿病、高血圧、心不全、呼吸不全(で気管切開)、食事ができないので鼻から胃へチューブを入れてたり、胃に直接穴をあけて栄養をとる(胃瘻)人などは老健、特養にはめったやたらでは入所できません。
    それらの人は病院の療養型病棟というところに入っています。その病棟が厚労省の施策で削減の一途をたどっています。だから療養型病棟にも入りにくい状況が増えてきています。医療を必要とする高齢者はいよいよ行くところがありません。自宅で老老介護がセキのヤマ。
    道路・空港・ダムや諫早は大昔に立てた計画通り先進国の中ではダントツの予算で進められていますが、医療をはじめとする福祉予算と教育予算は先進国の最下位争いをしている状況。
    私たちが選んだ代議士たちがこの法律を(強行採決してまでして)作っているのです。民主主義の世の中ですので法律には従わざるを得ないのが現状です。

    • 奥居武
    • 2008年 7月 29日

    施設に入ろうとしても何年も待たされる…つまり供給が需要に追いついていないわけですが、そうなってしまうのはビジネスとしても楽でない…ということがあるのでしょうか。(利用者が払える金額にすると収支が合わないとか。)
    かつて「ニュータウンを造ろう!」と決めた時と同じような「大きな決断」が必要ですね。1955年以降、住宅供給は大きな「国策」でした。
    よく「子供は選挙権がないが老人は選挙権があるので、教育問題は高齢化対策ほど票にならず後回しにされがちだ…」などと言われますが、高齢者は概して熱心に選挙へ行くのに、なぜこんなことになっているのでしょうか?

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