
万博の建物は「仮設」であることが前提で、終了後撤去することが定められています。これを今時「もったいない。無駄遣いだ」とする意見もありますが、中には変わった運命をたどるパビリオンもあります。日本館の隣にある「ウーマンズ・パビリオン」。
「ウーマンズ」というテーマの取り方自体が昔はなかったものですが、ドバイ万博EXPO2020で登場して今回は2回目。「女性」というテーマは昔からありましたが、やっと万博のパビリオンになってきた…ということです。ジェンダーに関して封建的な気風の強い中東で「ウーマンズ・パビリオン」が初めて現れ、日本に引き継がれたことは、万博から世界へ問いかける連続したメッセージとしての意欲を感じますね。
今回の「ウーマンズ・パビリオン」は、万博協会、内閣府、経産省に、カルティエがスポンサーとしてついています。グッチやヴィトンはフランス館につきましたが、カルティエはなかなか考えました。
しかもこのパビリオンのファサード(外観部分)は、ドバイの日本館のリユースなのです。解体して、運んで、敷地に合わせて組み替えて、使っている。それは資源環境問題への一つの答えでもあり、「万博は1回1回が単発のイベントなのではなく、連続した社会メッセージである」ということも語っているようです。
70年当時の万博では(途上国が出展するプレハブ建築も当時からありましたが)、多くのパビリオンは「特注」で、1回使ったら壊してしまう…というものでした。それぞれに凝ったデザインはまさに「仮設の華」でしたが、今から思うと「世界がまるごと昭和」だったような「資源使いまくり+やりっぱなし」の時代でした(その壊した瓦礫が、千里万博公園の地下には埋められています。会期中はいったんフラットに造成された会場が、今、ふたたび起伏のついた自然文化園に変身しているのはパビリオンが埋まっているからなのです…)。
その後万博はあまり注目されない時期を経ますが、2005年の「愛・地球博」ではまさに環境問題を無視できない社会になり、メジャーなパビリオンもずいぶん「規格化」が進んでプレハブ工法が目立つ会場になり…「ずいぶんつまらなくなったな…」と感じたのも正直なところです。
その後、海外の万博を回った素人の感想ですが、最近の万博は「規格化を進めながら外観の変化を付ける」のがずいぶん上手になってきた感じがします。オリンピック施設の問題でもクローズアップされたように「仮設であること」は「恒久的であること」に必ずしも劣るものではなく、それなりの合理性があります。そのような流れの中で、パビリオンも「組み替えて再利用する」という挑戦は、大変意義のあることだと思います。
しかもこの「ウーマンズ・パビリオン」のファサード、2年後の横浜花博(GREEN × EXPO 2027)では、また組み替えられて「3度目の利用計画」が進められているとのこと。花博は概して通常の万博より簡素な会場になりますが(1990年の大阪花博はバブルだったのだと思います…)、同じ構造物を使い回しながら全く異なる万博が展開されることは、とても楽しみです。
「ウーマンズ・パビリオン」は内容も芯が通っています。このメッセージの強さ!行列していた観客は女性が8割…という感じでしたが、男性も見るべきだな。(僕は2回入ってしまった)

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