たとえそれが大海の一滴であっても。(石巻市中瀬)

東京や大阪からてんでに集まった急ごしらえのボランティア・ツアーグループ。地元に住み込んでいる活動団体が、「やること」を割り振ってくれました。震災から8ヵ月たっていることもあり、そのへんのしくみはしっかりできています。
30名のグループを2つに分けて、A班は倒壊家屋の家財かたづけ、B班は公園だった広場の草引きとガラスの破片や小石拾い。僕はB班に入れられました。地域に元気を取り戻すため11月27日にフットサル大会をこの場所でやりたいので、子供が走り回っても大丈夫な状態に戻したい…との説明でした。運動不足の都会の中年が半日ごそごそ働いても、大海に目薬をさすようなものだなあ…これはボランティアという名目で被災地を見せていただくようなことだなあ…と思いつつ、草引きだったら、ふだんもやってるし、なんとかできそうです。
現場は旧北上川の河口に近い中洲のような場所で、その名も「中瀬」。大津波をもろにかぶって荒地のようになっていましたが、震災前の映像を見ると、たしかに家族連れが憩う場所だったようです。背後には、この地にゆかりがある石ノ森章太郎の萬画館(UFOみたいな建物…休館中)や、旧石巻ハリストス正教会の姿も見えます。なぜか自由の女神をかたどったオブジェがありますが、これは川の中州で海に近い…という立地からニューヨークを連想したのでしょう。
「猿の惑星のラストシーンみたいだなあ…」という感想がつい出てきますが、津波が運んだがれきがぶつかったのでしょう…下半分をいためつけられながら、それでも海に向かって立っている姿は、けなげです。
フットサルをやる…というだけあって、かなり広い場所でしたが、15人でやるとさすがにどんどんきれいになって、はいこのとおり!草の陰に隠れていたガラスの破片も、日本人的几帳面さで丁寧に拾い集めました。破片はナナメから見るときらきら光るのでよくわかります。こうやって抜いた草やごみを集めてみると、ささやかな達成感がわいてきます。ほんとうに…ほんとうに自然の威力、災害の大きさから比べたら、「大海の一滴」というべき成果ですが、それでも来てよかったなあと思いました。
やはり自分の目で見ることで、その場所が身近に感じられたのが、よかった。震災直後の状況からはかなり片付いていたとしても、テレビで見ているのとは全然違います。
実はこの中瀬は地震による地盤沈下もあって、潮が上がると冠水するおそれがないとも言い切れず、恒久的にどのような土地利用になっていくのかは、まだわからないところがあるようです。それでも11月27日、いっときでもこの場所がにぎわえば…来た人が、希望のかけらを拾い集められたらと、遠く大阪から応援しているのでした。
大勢の方が亡くなっている場所で「元気をもらった」という言葉は軽く使えないのですが、たしかに得るものがたくさんあった旅でした。11月27日、東北が晴れますように!

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