バス停で教わる人生

団地の建替が進んで若い(と言っても30~40代中心)家族の流入が進んでいる千里ニュータウンではありますが、平日の午後に路線バスを使う人は、今や高齢者がメインです。

先日もバス停でご近所のAさん(80代)と一緒になりました。90代のご主人が長らく入院されていて、面会に行かれるのです。「暑いとこたえるわ!」と言いながら、Aさんはいつでも朗らかです。バス停で一緒になった子ども連れのお母さん(たぶん知り合いではない)にも「そっちは暑いからこの陰に入りなさい!」と積極的に話しかけます。お母さんは少し戸惑っていたようですが、バスが来るまでの数分間、ひとときの会話が生まれます。やはり80代のBさんが、手押し車を押しながらゆっくりやってきました。Bさんは最近、少し足が悪いのです。Bさんは次のバス停で降ります。母も生前は、バス停1つでもバスに乗るようになっていたなと思い出します。「トシをとると、毎年が速くなって…」とおっしゃいます。「ひとつのことをするにも時間がかかって…すぐに1日終わってしまいます」と言われます。

そうか。「トシをとると時間がたつのが速い」というのは、生きてきた時間の尺度が長くなるから、相対的に1年が短く感じられるのだろう…」と思っていたのですが、そうじゃないんだ。やりたいことがあるのに体がついていかない…という焦りでそう感じるのか。これは新しい発見でした。Aさんが「ほんとほんと!」と合いの手を入れます。

やがてバスがやってきました。バスの運転手さんも、事故防止の観点もあって、時間がかかる高齢者の乗り降りもゆっくり待っています。そういうお客さんがむしろ大半になって、数年前にはバスのダイヤが遅く改正されました。昔と同じ所要時間では、どうしても遅れが出てしまうようになり、実情にダイヤを合わせたのです。書いてある時間に来ないより、最初からゆっくりに設定してあるほうがイラつかなくてすみます。

暑いから自家用車で行っちゃおうかなあ…と思いながら、AさんとBさんの話が気になって、バス停に向かう僕も65歳なのでした。(まだヒヨッコだな!)

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