とても贅沢な離れの庭

半月前になりますが、1月31日、万博記念公園の自然文化園を設計された吉村元男さんの新著「奇跡の万博公園」(マルモ出版)の出版記念講演会が中之島公会堂でありました。不肖私も千里ニュータウン在住の「隣人」として、千里ニュータウンから見た万博公園の印象について、20分ほど登壇してプレゼンテーションをする機会をいただきました。

吉村さんは若くして「万博跡」の公園化設計を依頼され、本来なら100年かかる「自然に近い人工の森」の造園を「30年で形にしてくれ」と梅棹忠夫さんから命じられたそうです。時間がかかりすぎると、交通至便な千里では都市化の圧力に負けて建物を建てられてしまう。だから30年でやれと。

なんとも迫力のある逸話ですが、今、70年万博から55年が経過し、「跡地」は立派な森になっています。日本最大の「人工の森」だそうです。千里には「日本最初の大規模ニュータウン」と「日本最大の人工の森」が隣り合ってあるわけです。

ニュータウン住民にとって万博公園は「とても贅沢な庭です」とお話ししました。広大な緑もあり、楽しいイベントやスポーツの試合も、国際級の「みんぱく」もある。(もちろん太陽の塔も!)今や50代なかばから下の世代は70年万博をリアルタイムで知らないわけですが、誰でも「バンパク行く」と言っている。庭のように親しまれているわけです。自然文化園は有料ですが、1日260円でこれだけのものを管理してもらってると思ったら、安いものです。経済感覚に厳しい関西人、払うところでは払うのです!

惜しいのは、万博もニュータウンも大きな輪っか(外周道路と周辺緑地)に囲まれていて、距離が近いのにアクセスが遠回りになること。だから「離れの庭」というわけです。

吉村さんは言うまでもなく、他の登壇者の方も一流の専門家で大変緊張しましたが、ジモトミンは一番万博公園を見ているのだからと思って、臆さないでお話しできました。楽しくて、いい会でした。

造園というジャンルは結果が出るまで何十年という長いスパンの仕事で、3ヵ月サイクルでくるくる回転して基本「消え物」な広告の世界(私がいた…)とは時間軸がまったく違うのが面白いと思いました。

窓を開ければ万博が見える千里に住んでいることは、なんと贅沢なことでしょう。これからも見守っていきますよ!(写真は2017年12月の撮影)

※吉村さんはまさに「大先生」ですが、ここはご出身の京大の慣習に敬意を表して「さん付け」とさせていただきました。

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