
もう1冊、「EXPOブックカバー・チャレンジ」。今回は『大阪万博が日本の都市を変えた』(2018年 ミネルヴァ書房、吉村元男著)。この本は、書店やネットでも手に入りやすいです。発売の頃、梅田の紀伊国屋では平積みになっていましたね。
前にご紹介した2冊(こちらとこちら)よりずっとハンディですが、著者は千里の万博公園が今のような形になった「原型」を設計したキーパーソンです。その本人からの証言、メッセージとなれば、貴重でないはずがありません。いま、千里万博公園に関わっている人、千里住民には必読の書ですね。
目次は大きく「大阪万博以前」と「大阪万博以後」に分かれています。ここでの万博は1970年万博。そう、この本は、他に言及も多い「万博中」のことは飛ばして、長い時間軸の中で、千里という場所の位置づけ、可能性について言及しています。
千里の万博跡地が「万博記念公園」として1972年に開園してから48年、つまり50歳ぐらいから下の方は、今の公園の姿は、あたりまえのように「そこにあるもの」としてとらえているでしょう。でも違うのです。「世界最大のイベント」の跡地で、これほど都市に近く広大な場所となれば、その利用法に関してはさまざまな議論、思惑、力学が百出して、やっと今ある「緑に包まれた文化公園」の形に決定した過程が、当事者ならではの丹念さでこの本には記録されています。しかもそれは、いったん元の緑を全部はぎとって平坦な「未来都市」に造り変えた場所を、また起伏をつけて「人工の森」に再度造り変える、壮大な実験だったのです…。
この本は2025年万博の大阪開催決定前に出版されていますが、夢洲という「第二の千里」を考える時、IRの是非だけが目立ってしまうのは、まことに貧困な議論だと考えざるを得ません。もっと大きな視点から、ブレイクダウンしていかなくてはならないのでは?
この本を読んでから万博の森を歩けば、まったく受ける印象が変わってくるでしょう。その森は、半世紀の時と人が協力して造った、前例を見ない壮大な「人工の森」だからです。
コメント
-
2025年 1月 28日
この記事へのコメントはありません。