展示された旗は訴える

こちらはEXPO2025の「赤十字・赤新月運動」館。万博では国家や民間企業だけでなく、国連など国際機関もパビリオンを出しています。「赤新月」はイスラム圏での「赤十字」ですね。小さなパビリオンのわりに予約制をとって観覧時間も「30分」としっかり見せようとしていたので何だろう?と思ったら、実に真剣な、胸に迫る展示でした。

万博は「国のいいところを見せる」「明るい将来像を描く」展示が多いもので、戦争をしていたり、貧しかったりしていても、展示の中の写真は笑っている顔が多いです。それを欺瞞とは思いません。しかし世界はハッピーだけでできていないことは、誰もが知っています。「赤十字・赤新月運動」は、戦争だったり、災害だったり、世界の困難な場面に乗り込んでいく使命を持った活動です。

この破れた赤十字旗は、東日本大震災で自らも被災した石巻赤十字病院で、直後から救援を続けていることを知らせるために掲げられ続けた赤十字旗です。病院自体は津波に洗われることはありませんでしたが、関係者には自分たちの家族や家を失った人もいた。しかし病院を閉めることはできない。助けを求める人がいる限り、病院は開け続ける。患者は断らない。そのことをアピールするために、ぼろぼろになったこの旗を出し続けたという、その現物です。

使命感。デジタルな仕掛けが何もなくても、モノ自身が語る力強さ。展示の原点だと思います。万博ではこういう展示も見られます。「いのち輝く」はただのきれいなスローガンではないのです。

(ネットで当時の同病院の動画記録を見つけました。→こちら。こういうナマの記録がまとめられていることが、貴重だと思います。それは「次の災害」への防災になるからです。)

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