「ご近所仲良く」こそ最強の防災

千里ニュータウンの人口の話の途中ですが、1月17日の日付でこの話を…
何度か書いていますが、18年前、僕は阪神大震災を芦屋で経験しました。建物は壊れなかったしケガもしませんでしたが、家の中の家具はすべて転倒し、あの瞬間の記憶は一生忘れることはないでしょう。地鳴りと、建物が全身で慟哭するような激しい攪拌、ガラスが割れる音、ガスの匂い…
僕が千里ニュータウンのことに関わるようになったのは、2005年秋に母を見送って、2006年の吹田市立博物館「千里ニュータウン展」の市民企画に関わってからですが、やはりきっかけの一つになったのは「震災体験」だったと思います。それでスイッチが入ったというほど明快ではなくても、「ストッパーが外れた」とは言えると思います。
僕の仕事は広告屋で、広告屋という人種は自分が生み出したクリエイティブで世の中が少しでもいいほうに変わると信じている、少々おめでたい…言葉を替えると「前向きで」「ロマンチストな」人間の集まりです。相手はいつも「世の中」で、大向こうを狙っているようなところがあります。マスメディアを使えば、たしかにいろいろなメッセージを届けることはできます。たとえ自分の受け持っているパートが「文章を書くこと」であっても…その影響力を、どこかで信じています。
ところが目の前で、たった20秒の振動で、鉄筋の建物やハイウエイが無惨に崩壊するのを見てしまうと…ああ、世の中変えるとか偉そうなこと言ってるけど、人間なんて小さなものだ…「目の前の具体的なこと」をひとつひとつ大切にしていかないと…と、「大向こう」もいいけど「身の回り」もね、と視野が自由になったというか…「価値観が変わる」というほど立派な変革ではありませんが…
とくに関西で「まちづくり」に関わっている人は、震災がひとつのきっかけになった…という話は、よく聞きます。うんざりするほど退屈な日常って、実はとても大切なのです。ご近所の顔も知らないで天下国家を語っていても…それって、誰を具体的に救えるのか?…大人の男が「ご近所」のことに関わるなどはずかしい…なんて格好つけてる場合じゃないぞと、ためらいが消えたというか、それが「ストッパーが外れた」ということです。地元愛をはばからず公言するようになったのも、震災以降ですね…トシを取っただけかもしれませんが…
そうなんです、巨大災害がやってきたら、目の前の人たちとしか、助け合えない…(それもできるかどうか、わかりません)…で、ふだん口もきかないような関係で、非常時にだけイキナリ助け合えるか?っていうと、それは無理なような気がします。特殊な状況からお互いが利他的になる「災害ユートピア」という言葉もありますが…
だから僕はご近所とは、少なくとも「仲が悪い」状態でいるのは、防災上の観点からマズイと思うのです。べたべたに仲がいい必要はないと思いますが…自治会とかって、そういう趣旨でやってるんじゃないでしょうか?
自治会は、個人の要求を最大化するための装置であってはならず、価値観も違う大勢の人が同じ町の中で心地よく共存していくための「調整の場」だろうと思います。
千里ニュータウンは、自由な気風と、開発当初何もなかったところから町を作ってきた経緯から住民が「主張する」気風があるように思いますが、権利意識ではなく、共存のための知恵として、「災害」ということをとらえてみたいと、いささかかたいことを書きました。
次回は、「人口の話」のつづきを!

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コメント

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  • コメント (6)

    • 松井
    • 2013年 2月 05日

    滑り台の上に写っているのは息子と私です。
    私は気が付かなかったのですが、4歳の息子と嫁が気が付きました。正月に帰省した時です。誰も公園には居なかったと記憶していましたが。
    幼稚園の時からこの公園で遊んでました。滑り台の後ろの丘がだいぶ痩せていたのが気になります。

    • 奥居武
    • 2013年 2月 07日

    アクセントになっていただき恐縮です。あまり人の顔ははっきり写らないようにしていますが、全然ヒトケなしも寂しいので点景程度にそっと入れることがあります。大晦日の昼過ぎでした。藤白台の景色もどんどん変わっていく中で、このふじのき公園は昔とほとんど変わらない貴重な場所になってきました。丘の土がえぐれて松の根が浮いたようになってきてますが、これはわりと前からそんな感じだったと思います。昔は子供でいつもいっぱいだったのと比べると、ひっそりしていますね。

    • 元メゾネット住民
    • 2013年 3月 08日

    千里メゾネットの建替が竣工目前に近づきました。
    トップページに写っているプラウド北千里への奥居武さんのコメントをいただけると嬉しいです。

    • 奥居武
    • 2013年 3月 08日

    最近とんと更新してなくてすみません…いろんなこと引き受けすぎて…プラウド北千里ですが、やはり見どころは部分的にですがメゾネット風の外観を再現しているところでしょう!建替でこういうことは、なかなかやらないことです。この住戸、どうなっているのかお邪魔してみたいです。あと広告で笑ったのは「ピアノ池の美景に面し…」みたいな文面。一時期は臭うし虫は湧くしで「埋めてしまえ」論も出たのに(その後皆の手が入って水質改善されましたが)ずいぶんピアノ池も出世したもんだなと微笑ましく拝見した次第です。駅に近いし南面公園だし、藤白台でたった1棟だった分譲団地の「別格感」をいまにうけつぐ135邸…というところでしょうか。完成が待ち遠しいですね。

    • 元メゾネット住民
    • 2013年 3月 12日

    奥居武様
    コメントありがとうございます。
    好意的に受け止めていただけているようで、安心しました。
    新しく藤白台住民になられる方への情報発信いただけると嬉しいです!!

    • 奥居武
    • 2013年 3月 14日

    ただいま「まちびらき50年」の記録集を作っていたりニュータウンの地図を更新していたり、先日は横浜の港北ニュータウンを見に行ったり(学生たちの研究発表会がありました)、住民ネットワークのイベントがあったり、ついさっきまでは団地が好きな若者たちの「団地曲ライブ」に行っていたり、ニュータウン活動いろいろ続けているのですが少し広げすぎてブログがお留守になってしまっています。しかしどこへ行っても思うのは、ニュータウンや団地が好きな人たちはけっこういるし(どこにもいるし、海外にもいるみたいです!)、好きなことをやっている人たちは本当にいい顔をしているということです。建替は本当に大変なことですが、生まれ変われる千里は幸せな町なのだということを、千里の人たちに知ってほしいですね。

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