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万博はその会場自体が「仮設の小都市」と言えますが、展示する対象として「都市」がどのように扱われているかも、ニュータウン好きには興味がつきません。まず、次回「大きな万博」開催国のサウジアラビア(2030年、リヤドで予定)。話題性が強いのは「THE LINE」と名づけた砂漠の中にまっすぐ伸びる線状の人工都市計画です。その長さ、なんと170Km!大阪から名古屋までと同じ距離です。幅は200m。高さは500m。その中に900万人が暮らせる都市機能を入れてしまおうという、あまりにもコンセプチュアルな構想です。(ここが万博予定地なわけではありません。全然別の場所です!)こちらのサイトにまとめられた画像を見ていると凄すぎてめまいがしてきますが、はたして本当に造れるのか?2030年にはその一部でも見られるのか?今回のサウジアラビア館でもいくつかの都市計画とならんで紹介されていましたが、5年後にサウジに行ってみようかな…という動機を強化するには魅力的すぎるぶっとび都市構想ですね。

2枚目の写真は中国館に展示されたサステナブル・シティの概念模型。中国は2010年の上海万博で、まさに「より良い都市、より良い生活」をテーマに史上最大の万博をやった実績がありますが、それから早や15年。今回の展示では歴史伝統の重みに力点が置かれ、未来都市の描写は簡素で後退した印象です(こちらの中国語サイトを日本語で読むのがわかりやすいでしょう)。中国では過開発から鬼城(ゴーストタウン)と呼ばれる未完の都市が続出してしまい、都市のイメージを提出するのに疲れてしまったのでしょうか?


3枚目はインドネシア、4枚目はマレーシアの都市展示。摩天楼と交通網、自然との調和。人口増加と都市集中が著しいアジア諸国では、「国の自慢」というより都市問題が喫緊の課題となっている切実感が伝わってきます。インドネシアの展示は新首都・ヌサンタラ、マレーシアの展示はクアラルンプールですね。このような展示は「未来予想図」と「現状+α」が混ざっているのが通例で、模型や映像がよく出来ていても「これがすでにある!」と思ってしまってはいけません。(ニュータウン育ちがそんなことで舞い上がってはいけない!)新首都にしても現首都にしても、政府の願望として展示が創られているということです。

最後は世界最大の人口を擁するインド。首都ではなく南西部のアマラーヴァティー州の州都の都市計画。「29の村に住む約3万人の農民が、市のために3万エーカー以上の開発用地を無意識のうちに提供している。」というすごいキャプションがついています。「無意識のうちに提供」ってことはないと思うけれど…。翻訳の精度が十分ではないのでしょう。3万エーカーは12140ヘクタール。千里ニュータウンざっと10個分です。
万博は「未来を展示するもの」で、とくに対象が「都市」になると「ほんとかな?」と思ってしまうような大構想話になってしまいがちですが、構想しなくては実現もないわけですから、こういう展示があったことを記録して、いつか見に行ってみたいものだと思います。「日本は人口減少しているがアジア諸国では増加している」と言われた状況も曲がり角が見えてきて、単純な人口増加期に描いた「未来都市像」に代わる都市像を、私たちはまだ描けていないのかもしれません。
と同時に、70年万博の際に千里ニュータウンはひととおり現物として完成して人が生活していたわけですから、そのアプローチは遠来の来場者にとってさぞびっくりしただろうことは想像に難くありません。
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