避難所のかたち

震災避難のテーマつながりで。3月末で営業を終えた旧グランドプリンスホテル赤坂の建物が、6月末まで、福島県からの避難の人たちの仮住まいに使われる…というニュースは読んだ方も多いでしょう。
グランドプリンスホテル赤坂。旧称・赤坂プリンスホテル。東京の華やかさを代表するホテル…というかこの屏風のような超高層建築の景観は、東京に行ったことない人でもガイドブックなどで見覚えある人が多いんじゃないでしょうか。ホテル自体の開館は1955年と古いですが、なんといっても有名になったのは1983年の新館開館からでしょう。韓国の李王家の邸宅を改装した旧館時代は「都心のそんなところにホテルあったっけ?」というぐらいひっそりとした存在だったのが、突然雲をつくような新館が出現して、赤プリは華やかな80年代を象徴する場所の一つにおどりでたのでした。新館の設計は丹下健三。そう言われてみればお祭り広場をタテにしたような…というのはこじつけ?場所も「赤坂」なら、この銀の屏風のような外観も、いかにもスタイリッシュな都会性をわかりやすくうちだしたデザインで、バブルっぽいという見方もあるもののそれはこのホテルのせいじゃなく、やはり多くの人に「愛された」建物だったと思います。
こんなところ僕はたいして出入りしたわけでもないですが、たったひとつ強い思い出は1983年3月の新館開館直後、大学の卒業式の後の園遊会でここを使ったんですよね…。友達とグループで部屋をおさえて朝までパーティー気取りでしゃべってました。そんな部屋がいくつもあって、あちこちの部屋を行ったり来たり…。やってることは学生合宿の飲み会と同じなんですが、場所が赤プリというだけで、もう大人気分…若気の勘違いはおそろしい…。
その赤プリが、名前も変えてがんばっていると思ったら(まだ30年もたっていないのに)競争激化から閉館して撤去するというニュースを聞いて、都会の華やかさはうたかただな…あんな大きな超高層ビルどうやって解体するんだろう?と驚いていたのですが、この震災で急遽、閉館から解体までの3ヵ月だけ避難所に提供するという話、2度驚きました。「避難所」というイメージじゃぜんぜんないですが、たしかにたくさん入ります。最後の最後まで、時代とともに生きる運命の建物ですね。
ホテルの建築は個室のカタマリで孤独にならないか心配になりますが、共用スペースもあるし、なにより同じ福島県の人たちがかたまっていることは情報交換もできるし心強いでしょう。これから3ヵ月、どんな避難所コミュニティができるのでしょうか。
全くかたちは違いますが、京都の向島ニュータウンでは避難で来た人のためのイベントをやったそうです。ささやかで、いい会だったと聞きました。避難の人たちは私たちの近くにも来ているかもしれません。たぶんこれから短期では済まない避難生活をどう力のあるものにするか?それは誰もがかかわる可能性のある2011年のテーマです。

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