豊かな公空間、簡素な私空間
- 2007/7/27
- 千里ニュータウン
- まちづくり, 団地, 建替
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この写真はちょっと佐竹台までお出かけ…千里ニュータウンは初めてという人を連れてきて案内すると、例外なく、あふれるばかりの緑とオープンスペースの広さに感嘆されます。「大阪は緑が少ない」と信じられているから、特にそうですね…。
千里は日本で最初のニュータウンであり、「ニュータウン開発は土地の価値を上げる」前例がないうちに安く買収ができたため、全国のニュータウンの中でも公園緑地率はひときわ高く取られています。いわば緑のスペースは「売れない場所」であり、逆に維持管理には費用がかかりますから、財政的な「度量」がないと、こういう設計はできないですね。言い換えるとこれは「誰にも占有されない公空間を贅沢に取っている」ということです。
一方、初期の団地は一戸が40~50㎡台で、当時から「狭い」とよく言われました。このために1980年前後に増築が行われましたが、依然「私空間は簡素である」と言えます。
つまり「豊かな公空間、簡素な私空間」が千里ニュータウンの特徴であると言えます。公園緑地率が高いうえに、団地でも戸建てでも…容積率は低く抑えられてきました。公空間が思いきり豊かに取られていたからこそ、私空間が狭くても生活満足度や愛着は高く保たれてきたのです。
これが最近の建替では、余剰地は売却され、容積率をアップして建物は大きくなり、私空間は豊かになるものの、その分が公空間を圧迫する…というシフトがみられます。団地でも戸建てでも、建替で建物が小さくなった…という例を聞いたことがありません。日本では「建替=大型化」です。一戸建ての敷地分割ケースでは、一軒の建坪は小さくなりますが、延べ床面積で見るとやはり「私空間」率を高くしていることになります。
さて、空中も含めて空間の総和は決まっているとして、「私」になるべく多く取り込むか、「公」に多くを残して共有するか?どちらの町が暮らしやすいのでしょうか。
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コメント (3)
「家庭は簡素に社会は豊富に」
自由学園を創設した羽仁もと子さんのこの言葉を思い出しました。そうか、ものの持ち方、暮らし方だけでなく、同様のことは「まちづくり」にもいえるのですね。
私は自由学園の卒業生でもないし羽仁もと子さんのご本も読んでいませんが、社会的に相当背骨が入ったポリシーであったことが伺われますね。十分ではない社会資本を使って、なるべく多くの人の生活が向上するように…貧乏ではない「簡素」の美学が、当時は生きていたのだと思うし、それは再評価されていいことだと思います。「人工都市」では設計した人々や時代の考え方が、町に残るのだと言えますね。
「家庭は簡素に社会は豊富に」って検索したらいっぱい出てきたので驚きました。この精神が今の日本の「まちづくり」にもっと生かされていれば…