こんな国際博会場もあるんです。(ドーハ花博)

(2024年3月の訪問記です。)

ラマダン期間中に当たってしまったため、夜に訪れることになったドーハ花博会場。大阪でいえば靭公園ぐらいの立地に服部緑地ぐらいの(東京でいえば日比谷公園ぐらいの立地に昭和記念公園ぐらいの)広大な都市公園があり、その一部を会場にしています。テーマはずばり「砂漠の緑化」(Green Desert, Better Environment)です。豊富な資源を背景に急激な人口増加を続けるカタール国にとって「砂漠を生かすこと」は国の死活問題とも言えるでしょう。

会場はメトロの駅1つ分ぐらいの長さがあり、メインじゃないほうの入口から入ったのでヒトケのない園路をえんえん歩くことになり(照明はちゃんとついています!)不安になってきた頃、見えてきました!パビリオンのゾーンが。中には広壮な敷地を構えている国もありましたが(一番大きかったのはサウジアラビア)、だいたい、写真のような感じ。会場が格子状に区切られていて、プレハブの展示館と庭園でセットという感じです。花博ですからね。庭園が半年間の実践場というわけです。実に簡素です。

日本の入口はこんな感じ。簡素な中にも伝統美とフラクタル状の「日よけ」のおもてなしもあり、真摯に作っているという印象を受けました。日本は70年大阪以来、75年沖縄、85年つくば、90年大阪花博、2005年愛知と5回の国際博のホスト国になり、来年の大阪・関西で6回目ですから、開催国としてはベテランです。国際博というのはプロ野球と似たところがあり「これから外に認められたい国」ほど一生懸命アピールをしますから、必ずしも大国・ベテラン国が力を入れるとは言えないのですが、日本はいつでも真面目にやっています。それが国柄なのでしょう。「日よけ」も単なる来館者サービスではなく、中東の都市開発では重要なアイテムで、環境との親和性を訴えるテーマにも沿っているというわけです。館内には生け花の展示もありましたが、自然を克服するのではなく、調和しながら美しく取り込んでいく日本のやり方は、中東の人たちにも訴えたことを祈ります。

会場をさまよっていると、夜中のパレードに出会いました。キメキメのダンスではなく、いろいろな国の衣装を来た人たちがゆるやかになごやかにそぞろ歩くように進んでいく行進は、観客ととても近いものを感じました。

こういう国際博、いいんじゃないかと思いました。日本は70年万博で初回にすごいものをやってしまったために固定観念ができてしまい、あとの博覧会がその亡霊に引っ張られ過ぎている。花博は万博協会とは元締めが異なり、開催概要が一定の基準を満たしたものは万博としても認める…という微妙な関係ですが、90年花博は、完全に「万博」でした。

派手におカネをかけなくても。ある社会課題に対して、半年間(3か月の場合もあります)多くの国の関係者が集まって交流を重ねれば、その交流自体に意味があるのです。来年の大阪・関西万博はもっと「中身」の議論を深めるべきだし、2027年に横浜郊外で予定されている「つぎの花博」は、1990年や2025年とは違ったものをのびのびとやってくれたらと思いました。

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