若い世代を呼び込むには?

「ニュータウン人縁卓会議」でわかったことは、大半のニュータウンで「いかに若い世代を呼び込むか?」ということが大きなテーマになっているということでした。
多くのニュータウンが開発された「人口増加期」は「人口減少期」に折れ曲がり、かつ建築規制緩和による都心回帰現象が、郊外ニュータウンの少子高齢化、人口減少に拍車をかけています。千里ニュータウン内の団地建替事例でも、若い世代から出て行ってしまう…という悩みが紹介されました。
どうしたら若い人たちにニュータウンを選んでもらえるのか?「ニュータウン二世」を呼び戻し、今いる人たちをつなぎとめ、新しい若い家族を呼び込めるのか?
一昨年秋に神戸三田のフラワータウンで行われたシンポジウムでは、「町なんだから人の出入りはあっていい。それは町が生きているということだ。ニュータウン育ちの子供たちが出て行っても、新しい家族を呼び込む魅力があればいい」という発言もありました。
縁卓会議では「お祭りをやったら…」「自治会には必ず入るようにルールを作るべきだ」「駅に近い便利な場所では若い世代も入ってくる」という意見も出されました。
ニュータウンでは多少は若い?世代として僕が思うことは、なにか義務的なニュアンスをもって絆を強めようとしてもダメだろうな、ということです。30-40年前と決定的に違うことは、人口が減少期に入って、町は「選ばれる」ものになっている、ということです(首都圏ではまだ増加圧力が勝っている地域もあるようですが…)。1960-80年代ならば、人口は増えるし地価物価は上がるし、若い家族は一刻も早くローンを組んで住宅を取得しないと、どんどん条件が悪くなる…という力学が大いに働いていました。
でも今は違うのです。けっこう都心部でも安いマンションができるようになりました。「ニュータウンは意外と便利だ」と言ってみても、都心はもっと便利です。それに利便性だけで高齢化を食い止められないことは、ほかならぬ千里ニュータウンが雄弁に証明しています。梅田まで19分、新大阪と空港まで13分という「超便利」さで、27%まで高齢化しているわけですから…。千里ニュータウンの中でもっとも都心アクセスがいい桃山台でも、高齢化率が40%近くまでいっている丁目もあります。
利便性だけではダメだ。ではどうすればいいか?
若い家族が「住みたい町」はどんな町でしょうか?便利なのは絶対条件。でも他に?学校が荒れていない町。遅くまで店が開いている町。コンビニが近くにある町。洒落たセンスのお店がある町。子育て仲間がいる町。年寄りが町内会を仕切っていない町。公園の中の道が夜暗くない町。…千里ニュータウンはどうでしょうか?
住居の個別物件に関して言うと、「家族3-4人でも狭くなく」「あまり高くないこと」が重要です。千里ニュータウン内で新築マンションができている区画でも、駅に近い場所は5000-6000万円台になってしまい、すると若い家族が入ってこれない…建替が終わったのに意外と町が若返らなかった…という話も聞きます。千里ニュータウンでは駅に遠いマンションのほうが若い世代が多いのは、価格差が反映していると思われます。
団地建替でできるマンションが高層化することについては、環境の変化を懸念する声も大きくあります。しかしあまり高さの抑制ばかりに気を取られると、少ない戸数で採算を取るために「高級マンション」になってしまい、町が十分若返らない…という側面もありますから、よくよくバランスを考えなくてはなりません。
若い世代が暮らしやすい町にするためには、若いセンスで考えなくては絶対にダメです。いわゆる「ニュータウン一世」は、かつて自分たちのセンスで自由に町を作ってきた、だから楽しかったのですから、それと同じ楽しさを下の世代に渡さないと…。若い人から見れば、40年前から出来上がっているルールに「乗るだけ」では、こんなにツマラナイことはないわけで、干渉のない他の町に行ってしまうでしょう。
僕は「ニュータウン二世」として、「ニュータウンらしさ」が消えてしまうことは避けたいわけですが、「ニュー」タウンであるならば2008年の「ニュー」も取り入れる町であってほしい。町は生きていかないといけないのですから、40年前の「ニュー」と心中してしまうわけにはいきません。
もっと世代を超えて話す場を作らないといけないですね。…と言っても「呼びつける」感覚ではソッポ向かれるだけですから、ケーキと紅茶を用意するぐらいのオシャレ感は必要でしょう。
「町の選択をオシャレかどうかで決めるのか!?」
そのとおりです!

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コメント

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  • コメント (6)

    • いつも読んでまっせ
    • 2008年 3月 04日

    言いにくいことを、、、どーもありがとう。
    府営建替えが始まります。。
    公社など、先行する団地が決めた高さ協定を 
    府営建替え事業でも踏襲してくれっ
    、という要望が  
    府の建替え担当者に突きつけられ、、
    府営住民としては 重大な興味をもって
    見守る、、という現況ですねん。。
    府営住民が抱える、最優先の問題は“高齢化”。
    つまり、時間との戦いですので、議論の紛糾は
    避けたいのですが、交渉する相手は“府”
    ばかりでなく、むしろ、“頑強な地元の人達”
    という展開になりそうです。。。
    高さを低くして、入居可能な部屋数が
    減ってしまっても、府営からの移転戸数が
    確保されるかどうか?
    先輩である公社自治会さんはそんな事情も
    考慮して、、る? 気配は今のところ
    感じられマヘンねん~~

    • 奥居武
    • 2008年 3月 04日

    「今住んでいて残ることを希望する人」の戸数が足りなくなるような建替プランになることは、絶対にありえません。必要戸数の確保は「最低の条件」です。府も事前調査をして、確保するべき戸数は何戸で、どういうヤリクリをすればスムーズに建替が進むか、綿密に計算しているはずです。府営区画の高さを規定する大枠は市の「まちづくり指針」であって、公社区画の高さではありません。指針より低めに抑えても今よりは高くなるのですから…(「活用用地」を売ったとしても)。
    不安も大きいことと思いますが連合自治会を信頼していただければと思います。皆が住めて、新しい人も呼び込めて、かついい環境をできるだけ維持するにはどうしたらいいか…?というレベルで連合自治会は調整を図っています。話がこじれたら、町の風通しが悪くなって結局皆が困るということを、どの区画の住民であっても心ある人はわかっていると私は信じております。

    • いつも読んでまっせ
    • 2008年 3月 04日

    >奥居武nさま
    速攻のレス、ありがとうございます。
    そ~ですよねっ!↓
    >府営区画の高さを規定する大枠は市の「まちづくり指針」であって、公社区画の高さではありません
    昨年の記憶を整理すると、、
    府が事前に調査した上で、まちづくり指針に
    沿った 高さ11階を算出し、府営住民に
    計画の全体像を提示したのが昨年の2/14
    (各自治会の役員には、その1週間前に事前説明会がありました)。
    片や公社建替え交渉の経緯は詳らかには
    知りませんが、公社の中層棟の高さが
    「8階」に落ち着いたのは年度がかわった
    夏の盆踊り~秋の体育祭の多忙な頃でした。。 
    時系列でいっても 府が府営住民に提示した
    時期のほうが 公社の高さが決着した時期よりも
    早いのですけどね~~。
    現在は、、
    「府と府営住民」とで合意した高さを
    「連合と公社2自治会と吹田市」が
    「低くしてくれ」といってるので、
    府が必死に戸数の再計算をしている、、
    という現況なのかしらん?と、、、
    (レスはいいですよ、また別の機会に
    別の角度から書きたいですし^^)

    • 奥居武
    • 2008年 3月 04日

    ネット上に書かれたことは「ひとりあるき」するといけませんので、取り急ぎフォローします。府に対する要望書は連合自治会名で出しているもので、公社2自治会の意見は(府営の自治会と同じく)連合自治会に集約されています。吹田市は専門的見地からアドバイス調整を行っている立場です。主役は住民であり、藤白台の意見をまとめているのが連合自治会です。
    で連合自治会の要望ですが、ただ「低くして」と言っているのではなく、北千里駅から北消防署にかけて、なだらかにスカイラインが調和していくように(あまりデコボコにならないように)…というのが本旨です。公社~府営~一丁目のマンション群と、藤白台が一体的に見えるように…それは売却で生まれる「活用用地」も含めて…というのが要望書におりこまれた「願い」です。
    建替問題に関してブログ上でお答えするのはあまりに多くの要素があり、やりとりを他の方がご覧になって早合点や誤解を招いてもいけないと思います。もしどうしても知りたい点がありましたら、右下の「メッセージを送る」から氏名住所と連絡先アドレスをお知らせいただけましたら私のわかる範囲でご説明いたします。

    • いつもよんでおりますねん
    • 2008年 3月 04日

    じゃ そうします~~♪
    ウエブリブログのアカウント、、
    とらないとメッセージできないのですね^^;

    • 奥居武
    • 2008年 3月 05日

    「いつもよんでおりますねん」さん、メッセージボックスを読んでください。ご面倒ですみません。

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