ウクライナ情勢の緊迫化を受けて、フィンランドとスウェーデンの2国が、NATO(北大西洋条約機構)への加盟申請を表明しました。両国はロシアと「西側諸国」の間に位置し、これまでNATOには加盟せず軍事的には中立の姿勢を維持してきました。

フィンランドとスウェーデン、遠い日本から見ると同じ北欧の2国で、国旗もお互いに色違いに見えてしまいますが、言語の系統は全く違うし、フィンランドはスウェーデンの支配下に約600年あり、その後戦争でロシアの支配下に入り100年あまり…その後のロシア革命でようやく独立を手にするなど複雑な歴史を持っています。

フィンランドの町を歩くと、公共の標識は必ず2言語で書かれています。私がどちらも読めないのは、上がフィンランド語で下がスウェーデン語だからです。地名のような固有名詞まで2通りあります!フィンランドでは、スウェーデン語を話す人も人口の6%程度あり、どちらも公用語とされています。有名なムーミンを書いたトーベ・ヤンソンは、スウェーデン語を母語とするフィンランド人で、ムーミンの原作はスウェーデン語で書かれています。公用語ではあるけれど少数派に属していた作者の感覚は、登場人物のどこか孤独な性格付けに反映されていると言われています。

フィンランド・ヘルシンキ郊外のニュータウン、タピオラホテルのサイトを見てみると、言語はフィンランド語>スウェーデン語>英語の順で来て、その次にロシア語が来ます。5番目にはエストニア語が来ます。タピオラからサンクトぺテルブルグまでは300km、ロシア国境までは150kmです。エストニアの首都タリンまでは海を挟んで90kmです(青森から函館までより近いです)。

違う国が近い距離で接していることの日常感や緊張感は、生活と文化に浸透しています。かつて<被支配/支配>の関係にあった両国が共同歩調を取ってNATOへの加盟を申請したことに、その決断の重みを感じます。

(フィンランドの町では英語の表示はありませんが、道を尋ねると誰でもものすごくきれいでわかりやすい英語で教えてくれます。「外国語としてきちんと学習した英語」という感じ。そして旅の終わり頃になってやっと、スウェーデン語表記のほうがまだしも英語に近いらしい…と気がついたのでした。)

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

好評発売中!

幕末から大阪・関西万博まで。日本と博覧会の関わり・ウラオモテが多面的にわかる!貴重な図版多数。1970年当時の万博少年として、私の証言も採録されています。こちらから購入できます。

好評発売中!

ランドスケープの観点から「万博レガシー」を考える特集号。超豪華メンバーにまぜていただき、千里万博の近隣住民として60年にわたり変化を見てきた私の講演録も出ています。こちらから購入できます。

好評配布中!〔無料〕

千里ニュータウンの全域がわかる「千里ニュータウンマップ2018」の制作をお手伝いしました。このマップは南千里駅前の「吹田市立千里ニュータウン情報館」で配布しています。

好評発売中!

吹田市立博物館とパルテノン多摩の2018年共同企画「ニュータウン誕生」の展示・図録制作をお手伝いしました。図録購入(吹田版)はこちら。多摩版はこちら。(内容は同じです)

アーカイブ

ページ上部へ戻る