薄れゆく「パイオニア」の面影

帰宅して家に入ろうとしたら、手ぬぐいを持った知らない男性に呼び止められ「もうすぐ近所で解体工事に入ります」とのご挨拶。前から測量などしていたので「そうかな…」とは思っていましたが、いよいよお別れの時がやってきました。このお宅とは60年近くのおつきあいで、2008年に父が亡くなった時には、おじさんとおばさんがお線香を上げに来られて「パイオニア仲間が減るのは寂しいですな」と言ってくださいました。そういう言い方があるのか。まさに「パイオニア」。ニュータウン開発当初、ひどく不便だった頃から住んできた、開拓民同士のような仲間意識。その言葉には父へだけでなく、町への思いがこもっていました。

そのおじさんおばさんも姿を見なくなり、施設に入られているようです。丹精された庭木に囲まれた、立派なお家でした。一度も建て替えず、最初に建てた家を上手に増築して使っておられました。庭には可愛い温室もありました。予告から1日遅れて工事が始まると、ばりばりと植木も伐られ、石垣も崩し始めたので売却されたのでしょう(持ち主が変わらない建替の場合は、外構は維持されるケースが多いです)。広いお家で「敷地分割はしたくない」とおじさんが頑張っていると噂に聞きましたが、どうなるんだろうか。敷地面が路面よりかなり高いので、分割はしにくいのではと思っているのですが。

町が変わっていくことは町が生きている証拠で、止めることはできない。若い家族が希望を抱いて入ってくるかもしれない。できるだけ印象は変わらないでいてほしいというのは、感傷なんでしょう。でも「惜しむ気持ち」も「町の継承」には必要です。

「パイオニア二世」の私も、もうすぐ65歳になるのでした。

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