パリ郊外の団地の物語(バティモン5)

今やっている映画です。「ニュータウン」と「大規模団地」は何が違うのか?日本ではどちらも法的な定義はなく、よって明快な線引きもできないわけですが、ごく大雑把に言うと、「大規模団地」がより複合化した町のワンセットが「ニュータウン」です(「団地」と言っても集合住宅とは限らないのが、またヤヤコシイ)。

この映画の舞台は、パリ郊外の架空の団地(高層の集合住宅)。老朽化していて、移民がコミュニティを作っています。冒頭、団地の一室でなくなった住民を棺に入れて、階段で下までおろすのに近所の人が一苦労するシーン、日本ではどうなのだろうと引き込まれてしまいました。エレベーターは故障して、もう長いこと使われていないことが会話からわかります。日本ではそもそも、病院でなくなる人が大多数になっていますね。

建替計画。旧棟を爆破!するシーンはCGでしょうか。市長が突然死し、代わりに副市長から繰り上がった新市長は、穏健な人に見えたのに、権力を手にしたとたん、ひどい手を使って「強制退去」に踏み出します。

この団地で育ったイスラム系の若い女性主人公は行政の前線で働いていて、住民たちと市の方針の板挟みになります。行政職員なら思わず感情移入してしまうかも。

「いきなり強制退去」に展開するあたり、いくら何でもこれはリアリティに欠けるのでは…?とも感じましたが、パンフレットを買って読んでみると、織り込まれたエピソードは実話を再構成しているとのこと。

日本のニュータウンも、多くの団地がこの映画に似た課題を抱えています。比べると、行政は100倍丁寧だと思いたいし、移民社会との折り合いもここまで深刻にはなっていないと思いますが、「共通の根」があることは間違いありません。永遠にもつ建物は、ないのです。主人公が「こんなになるまで長いこと放っておいて!」と市長に怒りをぶつけるシーンは、心に刺さります。

これは外国の架空の話で、私たちの現実の話です。マイナー系の映画館でやっている作品ですが、マイナーな話ではないのです。これから建替を迎える多くの人たちや、行政に関わる人に、見てほしいです。

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  1. 2024年 6月 10日

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