
「ブックカバー・チャレンジ」のニュータウン版、ひさしぶりに取り上げるのは「郊外戸建住宅地 次世代につなぐ戦略」(学芸出版社 室田昌子著)。「戸建住宅地」にフォーカスしています。
首都圏や京阪神では「集合住宅」のほうが主流になっていますが、全国で圧倒的に多いのは「戸建住宅」。更新(流通、建替+リフォーム)しながら住み継いでいくときに合意形成が独立しているという利点はあるものの、人口減少・高齢化が進んでいく日本で、「集合住宅のほうが、手が届くし維持しやすいし…」という空気は、戸建民にとっては頭が痛いところです。
だからこの本は、決してマイナーではない、多くの人たちが抱えている課題に正面から、あらゆる角度から、かつ学術的に取り組んだ力作です。空家問題、高齢化、緑の管理、子育ての場として、働く場として、自治会、行政との関係…目配りが効いています。
本著を、郊外戸建住宅地を有する自治体の職員や関係者、また住宅地に住み不安を抱える住民、自治会町内会や地域団体で活躍する方々、NPOや市民団体、コミュニティスクールなどの関係者に呼んでいただきたい。(「はじめに」より)
もうめちゃくちゃ幅が広いわけですが、それだけ「戸建住宅街」はあらゆる課題が幕の内弁当のように詰まっているわけです。多くの町は(多くのニュータウンもそうですが)「集合住宅」と「戸建住宅」がセットで成り立っていますから、戸建住宅街の課題に取り組むことは「地域全体の魅力をアップする」ことでもあります。(千里ニュータウンの場合、戸建に住んでる人口は全体の2割未満ですが、住宅地面積では半分を戸建が占めています。半分がヘタッたら町の印象に影響は大きいですよね…)
戸建に住んでいる人は「プライバシー志向」が強いのも課題ですが、町がヘタれば、結局自分たちの暮らし心地も下がっていくわけです。
著者の室田さんはコンサル勤務ののち長年東京都市大学などで教鞭をとられてきた方で、横浜の港北ニュータウンをはじめ、各地、海外も対象に研究されてきたベテランですから、学術の骨格×現場での実践例、双方の視点からこの大きな課題にヒントを与えられています。
ものすごく包括的な話題を一冊に凝縮しているので、個別の課題に対しては「もっと掘り下げて知りたい…」という欲求が出てくるかもしれませんが(たとえば緑の維持管理だけでもすごく広くて深い問題です…)、自分たちの町の「位置」を確認する入口としても、すごく役に立つんじゃないでしょうか。悩んでいるのは、自分たちだけじゃない!と思えば、甘口じゃないけど励まされる本でもあります。読み応えありますよ~
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ランドスケープの観点から「万博レガシー」を考える特集号。超豪華メンバーにまぜていただき、千里万博の近隣住民として60年にわたり変化を見てきた私の講演録も出ています。

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