「ニュータウン・ブックチャレンジ」4日目は『海に沈んだ町』(2011年 朝日新聞出版、三崎亜記著)。短編集ですが、ジャンルとしては「ファンタジー」?少し不思議な世界です。三崎さんは『となり町戦争』でデビューしてこれは映画にもなったようですが(未見)、「町」という区切られた空間を舞台に一連の作品を発表しています。
だらだらと続いていく町並みではなく「区切られた町」といえば、ニュータウン。『となり町戦争』では町が隣町とある日淡々と戦争を始めてしまい、一見何も変わらないのですが広報紙に出る戦死者数は増えていき…と、このコロナ禍の状況を予見するような設定でしたが、「なんとなくこの人の世界はニュータウンぽいな…」と出る本を追いかけていたら、ついにこの短編集ではずばり「ニュータウン」というタイトルの作品が収められています。
内容はかなりコミカルで、意地悪です。ネタバレになると面白くないので、帯に書かれている「生態保存された最後のニュータウン」という言葉だけをご紹介しておきます。ニュータウンという別世界にハマってしまうと、人生大変なことになります…。この作者は(たぶん九州で)市役所職員をしていたそうですが、千里に取材に来たんじゃないかと思うぐらい、「思いあたること」がいろいろ出てきます。ファンタジーなのに…。僕はファンタジーの中を生きているのか?『となり町戦争』と『海に沈んだ町』の間に発表された『失われた町』なんか、「30年に一度、忽然と消滅する町」って、団地建替に題材を取っているとしか、思えません。(僕の世界観が、歪んでるのかな?)
この人の作品は、作品によってかなりファンタジー設定が強く、好みが分かれるかもしれません。長編はロール・プレイング・ゲームに取り組むような「没入」が必要です。しかしニュータウンって、そういう町なのかも?
ちなみに表題作の「海に沈んだ町」は津波を連想させ、実際に「海は地震と一緒だ。突然やってくる。だれも逃げられやしねえ」という記述もあり、この本は2011年に出ているわけですが、奥付の日付は「2011年1月30日」発行となっています。
ファンタジーは現実を組み替え、架空の世界を構築しながらリアリティに迫るものですが、ときとしておそろしいように現実と符合してしまうことがあります。クセの強い世界をお好みでしたら、ご一読を。
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