ニュータウン育ちのお台場感覚

あと1回だけ、お台場の話を。
こういう妙にコザッパリした新しい人工都市に来ると、いつも僕は「同じ人工都市育ちなんだから他の人よりは適応性が高いはずだ…」と考えます。僕がはじめて見た頃の千里は、それはもう、黄土色のホコリが舞う西部の開拓地かSFの世界そのものでした。「こんな月面みたいな町、人が住む場所じゃない!」と大人は感じたかもしれませんが、その頃のニュータウン育ちの子供にとっては、そのほうが原風景だったんですから…。
でお台場なんですが。泊まってみたのは初めてなんですが、やっぱりと言うべきか意外にと言うべきか?…どうにも落ち着かないのです。何が違和感を感じさせるのか?…千里とお台場、同じ人工都市なのに何が違うのか?考えてみました。
1.地形が違う。(丘陵で坂だらけの千里と、埋立地でまっ平らなお台場)
2.道路が違う。(地形に沿って曲線の千里と、直線しかないお台場)
3.用途が違う。(住宅中心の千里と、オフィス中心のお台場)
4.ヒューマンスケールが違う。(お台場はバブル期の開発のためか、すべてが過度に立派でデカイ!街の中の移動はローラースケートが似合いのような…。千里も高度成長期の開発ですが「量の供給」という事情があったため、建物はむしろ簡素だし、「徒歩圏」の考え方が背骨にあります)
5.潔癖さが違う。(千里は秩序ある街区形成にこだわったため、たとえば住宅と商業地はキッパリ分かれていますが、お台場はバブル経済が途中で挫折したためか、用途設計が甘く感じられます)
6.古さが違う。(築40年前後の千里と、築10年前後のお台場)
1.3.6.は所与の条件ですから言ってもセンナイことですが、2.4.5.は人的要因…「千里派」の僕としては、もう少し街をヒューマンにする設計ができたのでは…と思ってしまいました。お台場は千里より30年も「若い」のですから…。ただしこれは「千里育ち」の観点で、「お台場育ち」の子供にとってはどうなのか?(お台場には一部ですが住宅と学校もあります。)千里も40年の間に緑が濃くなり、カルガモなんかも居着いて、千里育ちのSF的感性が退化してしまっているかもしれませんね。

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