町は何度でもよみがえる。

神戸の震災から17年。今年の1.17は3.11があってからはじめての1.17ということで、ひときわ重く感じられます。
僕は母方の実家が神戸(東灘・魚崎)で、17年前の震災では全壊しましたし、僕自身、震災のときはちょっと気取って芦屋で一人暮らしをしていました。震度7経験者です。窓ガラスが割れたクルマで命からがら20kmを8時間かけて千里まで逃げてきたのが、きのうのことのようです。そんななかでケガひとつしなかったのは、まったく偶然でしかなく、生きていることも偶然だという思いがずっとあります。
でも実は、震災前はいろいろ精神的に行き詰っていたので、震災で周囲が「全部チャラ」になり、もうあとは生きるしかない、やり直すしかないと思ったらかえって元気になってしまって、おかしな言い方ですが震災に救われた…という部分もずいぶんありました。人間の感情はまったくわかりません。
ところが今回の3.11で、1.17をはるかに超える事態に、ふたたび言葉を失ってしまったのです。自分はあんなに強くゆさぶられて、それを乗り越えたような気分になっていたのに、何もできない…。「災害の実感」というものは距離が離れるとまったく違ったものになるということを知っているだけに、やすやすと「絆」なんて言えないと感じました。
でもそのまま放置すると自分の中に「オリ」がたまったままになることはなんとなくわかって、たまたま機会もあって10月にやっと(ほんとにわずかですが)東北に行ってきました。
ケガをしたわけでも、家族友人家財を失ったわけでもなく、僕なんかが17年前の被災経験を言うのはほんとにおこがましいのですが、それでもあえて言うとしたら、災害の克服には、時間がかかります。完全に元に戻ることは、ありません。失った人や景色は、戻ってきません。神戸も「ほら、こんなに元気に復興しましたよ!」と言うのは半分はほんとだけど半分は強がりで、経済の落ち込みは17年たっても回復できていません(震災のせいだけじゃないと思うけれど…)。高速道路やビルはすっかりきれいになって、はじめて来た人はどこが震災の跡なのか全然わからないだろうと思いますが、自宅が再建できないままになった人は、大勢います。
それでも…それでも、町や人の心は、元通りにはとうていならなくても、少しづつでも回復していくのです。元通りにならなくても、人は生きていくことができるし、おなかもへる。可笑しなことがあれば笑ってしまう。助かった自分を責めながら、運命を呪いながら、新しい日常に慣れていきます。
前のようにいかないこともたくさんあるでしょう。でも前にはなかったことも生まれるかもしれない。僕は何となく、人生傷ついてるぐらいのほうが、品もあるんじゃないかと思うようにしています。一寸先はわからない。でもそれは災害のせいじゃなく、人生ってそもそもそういうもんじゃないのでしょうか。
ですから3.11の被害に遭われた方には、時間がかかることを責めないで、きょう一日を大切に、自分は自分のためだけに生きてるんじゃなくて、生きてるだけで誰かのはげみになってることを感じてもらえたらと思います。
ほんとうに巨大な災害だから、皆が少しづついつもより力と知恵を出すしかない。ありったけの力を出し続けたら、きりがないから倒れてしまいます。「少しづつの力」でも、皆で出せば町は何度でもよみがえっていくのです。
写真は去年の1.17に撮った三宮駅前。ここの被害はほんとうにひどくて、震災前とはけっこう違うのですが、それでもやっぱりきれいだし、僕は神戸が好きです。

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コメント

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  • コメント (4)

    • Ryo
    • 2012年 1月 19日

    ホント、きれいな写真です。
    神戸の夜空の美しい蒼色をみながら
    10代の頃よく歩いた神戸の街と
    この17年間に想いを馳せてしまいました。
    作る、造る、創る・・・
    人はつくるために生かされているのですね。

    • 奥居武
    • 2012年 1月 19日

    ありがとうございます。そうですそうです、自然の大きさの前に人間は実にちっぽけだけど、何かを「つくる」ことができる。これはほんとに素晴らしいことですね。左手前の「そごう」のビルは震災で真ん中部分の床が崩れてしまいましたが、その部分だけ広場にして(エスカレーターが光ってる手前の部分)復活しました。ニュータウン育ちの胸に焼きついてるものがあるとすれば「人は町を造れる」ってことじゃないでしょうか。神戸は戦前の大水害もあったし(そのときはこのフラワーロードが大河のようになって何千人と亡くなった)戦争もあったし震災もあったけれど、何度傷だらけになってもこんなにきれいなんですもん。

    • くまもん
    • 2012年 5月 31日

    始めましてです。実はここのブログを今日一日中じっくり読ませて頂いてますσ(^_^;)
    今仕事場が三宮なんでこの風景にかなり見慣れてしまってますが、人が造った街。何度でも人類が存在する限り蘇る。と感じました。実は昨日の嵐の後用事で神戸にいったのですが丁度そごうのあたりからミントにかけて大きな虹が架かってました。当時はまだあたしは幼稚園年長の神奈川に住んでましたからリアルでは知りませんが箕面のじぃちゃんちに電話が繋がらなかったのは覚えてます。そいえば、三ノ宮の駅って映画「火垂るの墓」に出て来ますよね。ながながと失礼。

    • 奥居武
    • 2012年 5月 31日

    くまもんさん、ようこそ。かなりお若い方のようですが、ブログ内検索していただくと「火垂るの墓」のころの神戸の写真も何枚か載せています。「震災の後」しか知らない方にも、神戸はやっぱり神戸だということに希望を感じます。

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