千里ニュータウンの「理想人口」は?-3

前回からつづく)
いろいろ心ふさぐ出来事が続いてかつてないほど間があいてしまいましたが、考察を続けましょう。1990年代に入った頃から、千里ニュータウンでは団地(集合住宅)の大規模建替が課題になるようになりました。一部の分譲団地では、かなり早くから、高層化して法定容積率まで余裕があった「余剰床」を販売し、その代金で建替費用を出す…という手法が議論されました。この方法は少ない(ときにはゼロの)自己負担で家が新品に替わるマジックですが、まず当事者間でもめ、つぎに周囲ともめる…というケースが続出しました。まだ使える建築をもったいないじゃないか、いや、機能はもう古くなっている、高層化すると日照や通風が悪くなる、いや、これは法で認められた権利だ…。
このようなトラブルがあいついだことを受け、吹田市・豊中市では、やがて来る「大量建替時代」に備えて、住民の共通理解やガイドラインを作る動きが2000年すぎから進められました(こちらこちら)。千里ニュータウンは大阪府が造った町ですが、その中心となった企業局も2006年に解散し、この町の行政の主役は両市に移っていました。千里では土地が安かった時代に用地を取得したため、集合住宅は法定容積率までかなりの余裕がありました。これを「普通の町」の感覚で建て替えると、一挙にボリューム感がアップすることになります。ニュータウンだから特別の法律を…ということは難しいですが、「ガイドライン」という形で、容積率200%のところを基本150%に抑える施策が取られました。
「千里ニュータウン最大の大家」である大阪府はりんくうタウン事業の失敗などから財政が苦しく、賃貸の府営団地、公社団地でも高層化して用地を圧縮し、浮いた土地を売却して民間マンションの導入に充てる…という方針が打ち出され、藤白台でも2006年頃から騒がしくなってきました。その背後には「千里ならば立地も良く人気が高いから売っても売れる」という目算があったわけです。売っても売れなければこんな計画は成り立ちません。
…ということで千里ニュータウンの再生は大阪府の財政問題とセットで語られることが多く「りんくうの失敗を千里で埋めるのか」という声も出ましたが、大阪府としては背に腹は代えられません。
…しかしここで僕が不思議だったのは「計画人口を持ってスタートした千里ニュータウンの再生に、新たな計画人口は設定しないのか?」ということです。…かつては若い「標準世帯」がいっぱいいてにぎやかだったニュータウン。この人口が7割にまで減ってしまった状態で、どれぐらい、またにぎやかにするのが「理想」なのか…?それとも減ってしまったままの静かな状態がいいのか…?その理想人口論がない中で、建物の大きさだけを議論してもまとまらないのではないか…?
両市が重ねてきたいろいろな再生議論のどこを見ても「理想の人口」に関する記述はありません(吹田市部分に関しては「住区再生プラン(案)」の中でこのまま建替が進んだ場合の将来推計は出されています)。…どうやら「市」の立場からすれば、「人口をコントロールする」という発想はないようなのです。それは、それだけの権限がないからです。…それにしても(強制力はないけれど)再生の「ガイドライン」を打ち出している以上、「この線で行けばこのあたりに落ち着きそうだ…」という目算はあってよさそうです。
それはだいたい、千里ニュータウンの人口がピークだった1975年の「約13万人」というのが、ひとつの目安なのではないか…?逆に言うと「実績のある数字」として、それ以外の目安はありません。ここから先は僕の想像ですが、つまり「一度入った人口はまた入るだろう」ということです。そこまでなら(一度それに合わせているから)インフラ(道路、学校、上下水道など…)もパンクせず、にぎわいの程度も想定できる。千里は人気が高いとすれば(都心から15kmで京阪神の真ん中にあるという好立地は永遠に変わりません)、いくらでも許容人口を上げることはできるけれど、地中に埋まっているインフラは、やり直すのは大変です。それを町のキャパとするなら、最盛期人口の回復が、ひとつの「暗黙の了解」になっているのではないか…?もちろん同じ人口でも子供の数は減っているし、社会全体は高齢化しています。一世帯あたりの人数は減っているから、その分の戸数を増やさなくてはなりません。それが「高層化によって増える戸数」とイコールになるように持っていけば、数が合う。
…僕は人口の専門家でも都市計画の専門家でもありませんが、千里ニュータウンの再生は、ただ大阪府の借金を減らすためだけではなく、「にぎわいを取り戻す」という観点から、あるべき姿が語られないといけないのだと思います。そこに関して明快な人口目標を誰も打ち出せていないことが、容積率などの建築計画に「根拠が足りない」→「住民が納得がいかない」原因を作っているのではないでしょうか?
それでは「人口が減ったまま」では何がまずいのでしょうか?
つづきは、次回!
(写真は一期一工区分が完成した藤白台三丁目の府営住宅新棟。右手前の空き地には同じデザインの民間マンションが建つ予定です)

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