神戸ポートタワーが50周年を迎えたそうです。
小さいころ、「魚崎のおばあちゃん」と呼んでいた神戸の祖母に、できたばかりのポートタワーに連れて行ってもらったことがあります。今もあるらしい回転喫茶店でジュースを飲みながら、祖母は港の話をしてくれました。メリケンパークのあたりはまだきれいな公園ではなく、いっぱい「はしけ」が浮かんでいて、水上生活者の人たちが暮らしているのだと祖母は教えてくれました。舟で寝起きして、子供は陸の学校に通って、また舟の家に帰ってくるのだと。もう定期航路の客船が来る時代は終わっていましたが、はしけの向こうには外国から来た大きな貨物船が浮かんでいました。埠頭のつけねあたりには、祖父が勤めていた小さな貿易会社がありました。神戸の港は今ほど観光ぽくなく、戦前のような華やかさもなく、むきだしの生活感そのまま。ポートアイランドも六甲アイランドも神戸空港も、まだありませんでした。
そのかわりに、海がありました。横浜で生まれて、祖父の仕事でサンフランシスコに行って、神戸に帰ってきた祖母は(全部戦争前の話)、海の向こうのアメリカを思い出していたのでしょうか。それからもう、50年がたってしまいました。
この投稿は2013年11月21日にfacebookに投稿した文章に加筆したものです。
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