静かに町は変わる-1(国循跡)

千里ニュータウンも非常事態宣言で息をひそめていますが、町は静かに変わりつつあります。

1つは、4月から始まった国循(国立循環器病研究センター)跡の解体工事。敷地が仮塀で囲われ、1977年以来藤白台を見下ろしてきた病棟も覆いがかけられはじめました。

この件に関しては(心臓が悪かった母も何度かここにはお世話になってきたので)先端医療の発展を祈りつつ、当初「現地建替」の予定であったものが「移転」に変わってしまったこと、千里が「看板」を一つ失う結果になったこと、一部の地元住民は「ヘリポートは作るな、優先診療は受けさせろ」など勝手なことを言い続け、結果的に現地建替を難しくしたこと、移転後の跡地利用がまったく都市計画上いいと思えない住宅開発になりつつあることなど、くやしい思いがつきません。

この土地は国から民間への売却となったために市も関与がきかなかったということですが、6.6ヘクタールもの広大な土地の活用に対して無力であったということは、やりきれないです。

この土地は「藤白台五丁目」で、藤白台小学校区ですが、藤白台小学校までは非常に遠く、かつ6.6ヘクタールも広さがあるため、約700戸(マンション664戸+戸建49戸)の住宅建設が計画されています。これだけの住宅が建ってしまうと、藤白台小学校はパンクの懸念が現実的になってきます。

一方で、それよりは近い場所に青山台小学校があり、こちらは児童数がきわめて少ない状態なので「藤白台五丁目は青山台小学校区にすればよい」という声が聞こえてきますが、すると幹線道路をまたいだ危険な通学になり、かつ「住区と校区が一致しない」例を作ってしまいます。

千里ニュータウンは、厳密な近隣住区理論により「住区=校区」で元の設計ができているので、これを崩すことは町の運営に大きな支障をきたします。大人のコミュニティと子供のコミュニティ区分が、一致しなくなってしまうのです。(千里ニュータウンで、住区と校区が一致しなくなった他の例では、地元は苦労されているという話を聞いています。)

つまり、このような「町の端っこ」に大量の住宅を入れることは、住区のバランスを崩し、どちらの校区にしても問題が起きる。「住宅ではない活用」(企業や研究所、福祉医療関係の誘致など)を市がもっと真剣に図るべきであったと考えるのですが。

移転先の「健都」ばかりがクローズアップされて、移転跡への配慮がおろそかすぎると感じるのは、僕だけでしょうか。

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