消え去るのではなく、変わっていくように

3月31日、阪急阪神ホールディングスは系列下の6ホテルを順次閉鎖すると発表。その中に「千里阪急ホテル」の名前がありました。報道によれば、時期は2025年度末頃。

1970年春の開業前に、大阪府が作った千里中央地区全体のパンフレットがありました。当時のねらいがわかるので、引用します。

ニュータウンの総建設戸数37,300戸の大部分を占めるアパート形成の住居は、まだ一般的には狭少であるので、訪問客のための宿泊施設が切望されている。

また、週末のリゾートホテルとしての要望も強い。

このほか、西ブロックの業務地区のため、あるいは新幹線や空港から僅か10分という地の利は、大阪都心の業務機能に付随するビジネスホテルとして非常に高い価値をもっている。

このような意味から、敷地内の駐車台数200台という点も利用して、ドライブインの機能を加味したエコノミカルなホテルがここに計画されている。

千里中央地区センター(大阪府企業局 1969-70)

リゾートもビジネスも…やや総花な印象も受けますが、面白いのは「ドライブイン」的なねらいが含まれていたということです。実はこのホテルから「北新田橋」を南に渡った左右には道路に周囲を囲まれたマンションが2棟建っていますが、ここは(住所は上新田ですが)ニュータウンの計画区域内で、やはりドライブイン的な施設を置くことを想定していた…という資料を見たことがあります。

たしかに、新御堂と中環、中国道の交点に立地していて国土軸にも直結した抜群の立地であれば、アメリカのようにクルマで旅をしながら気軽にストップできる。そういう機能が構想されてもおかしくはありません。

千里阪急ホテルは1970年にオープンしてから、1976年、1984年、1991年と増築され、宴会場や客室が強化され、その代わり駐車場台数は減らされています。これはドライブイン的な利用が思ったほど定着せず、代わりにグレーター千里構想を背景にしたコンベンション機能の強化など、利用実態の変遷があったものと思われます。

1970年当時は旅行や出張でも「親戚や知人の家に泊めてもらう」という通念が今よりずっと強くて、今はその分をホテルが引き受けていると言えると思いますが、たとえば外食などはレストランがたくさんできて、別にホテルでなくても行く所はいくらでもあります。また千里でのコンベンション機能はとても定着しているとは言えません。一方でこの数年はインバウンドの波が、この千里にもおしよせていました。50年間、実にさまざまな変化がありました。

直線ばかりが多い計画都市の中で曲線を多く取り入れた建築は、たしかに千里住民の「居間」のように親しまれてきましたが、実際客室に入ってみると(最初からある東館のほうですが)部屋はずいぶん小さく感じられます。細かく段差をつけたフロアは風情のあるものですが、バリアフリー的には要注意の点も否めません。

たまたま、コロナによる他ホテルの閉館と同時に発表されたので「コロナの影響がここにも…!」と受け取られましたが、実際はいずれにしても更新するべき時期に来ていたのであり、千里中央全体の再開発の一環として「方針が固まった」ということだろうと思います。ショックを受けている人が多いですが、閉館予定は「2025年度末頃」=「2026年春」=万博のあと、5年も先です!

この敷地は千里中央地区センターの一角で、豊中市の活性化基本計画の中には含まれています。(具体的にどうする…ということは書かれていませんが。)

都心や空港への距離、国土軸への直結性など、抜群の立地は今も、これからも変わりません。北摂は人の行き来が激しいわりにホテルの室数は少なく、千里ニュータウンの中にもホテルはここと南千里にしかありません。

今の建物や屋号でなくなってもニーズがなくなったとは思えないので、「千里の居間」としての機能は姿を変えながら引き継がれていくことを、期待しましょう!「関係人口」ということも注目される今、人の行き来を支えるホテルは、地域に必要な機能の一つです。できれば…あまりキラキラにしないで、緑に埋め込まれたような環境を引き継いでもらえたらと思います。あと5年、せいぜい使って「地元の愛着」を示しましょう!

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コメント

    • 久米浩文
    • 2021年 4月 05日

    奥居様
    40年以上ぶりです。
    青山台中学校、千里高校の同級生の久米です。
    確か、千里阪急ホテルは、コロナがなければ千里高校の同窓会の会場だったですよね。
    閉館してしまうのはさびしい限りです。
    今、弁護士をしております。
    賃料でまだ折り合いがついていないので未定ですが、北千里diosに事務所を開設することを計画しております。
    北千里近辺に事務所候補地がないか探している最中にオックンのブログにぶち当たり、思わず脈絡のないコメントをしてしまいました。
    真偽は定かではありませんが、40年ほど前に、ヤマシから「ジャンクション」考えたんオックンやでと聞いたことが懐かしく思い出されます。
    これからの益々のご活躍をお祈りしております。

      • 奥居武
      • 2021年 4月 05日

      久米君!奥居ですよ。そうそう、シチズンのサブブランドのjunctionは僕が考案したネーミングでした。北千里は賃料高いだろうし再開発問題が出てきますね。友達の弁護士が近くにいてくれたら心強いけれど…。千里ニュータウン内は個人事務所に使いやすい物件が極端に少ないのですよ。折り入ったご相談があれば、ブログTOPの一番上の「お問い合わせ」からご連絡いただければダイレクトにメールが届きます。不動産事情も知ってる人につなげられます。

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