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- 日本のニュータウン, 関西
- 白砂青松を復元する(潮芦屋)
海水浴場があったころの阪神間は、こんな風景だったのでしょうか。人工の潮芦屋ビーチの周囲には、高度成長期まで阪神間にはいっぱいあった松林が再現されています。通りかかると若い松の葉っぱがいい匂い…。
阪神間の松原と海の原風景は、まさに風光明媚というべきもので、谷崎潤一郎の「卍」などにも描かれています。
高度成長期に造られたニュータウンは(千里もおおむねそうですが)元あった景色を必死に塗り替えて「新しい景色」を造ろうとしたかのように思われます。芦屋浜も1970年代に造られた部分は、まさにそうです。村上春樹が「羊をめぐる冒険」で書いた空虚感は、その「塗り替え」が生んだものであったでしょう。
しかし時代が下がり、最近のまちづくりは、その土地の原風景をなんとか取り入れたり、再現しようという方向に変わりつつあるのではないでしょうか。千里ニュータウンでも「じゃあ千里らしい景色って何よ?」と問われると、「竹」に帰っていったりして、そういうイベントや活動が行われています。(松原のある浜の風景や千里の竹林も、もとはと言えば江戸~明治期に人工的に造られた風景らしいですが…)
もちろんそれが、開発の「罪滅ぼし」であったり、「ぱちもん」の原風景であってはなりません。しかし記憶やストーリーを失った新しい町をどんどん造っても、すでに人口減少時代に入った今、人は来ない。この人工の松原は、ささやかだけど一歩前進とは言えるのではないでしょうか。
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