(2024年3月の訪問記です。)
観光客もまず行く!というUAEはアブダビのグランド・モスクですが、壮大な空間の中心部には「何もありません」。イスラム教では偶像崇拝は固く禁じられており、これに連なる祭壇も造らないことになっているからです。
キリスト教でもプロテスタントは偶像崇拝を戒め、教会の中はカソリックより簡素にできていますが、十字架はかかっているし、信徒が座るイスは並んでいます。
ところがここでは、イスなども一切なし。広い空間がただ広がっているだけで、清々しいほどでした。それで地べたにひれ伏す…という祈りのスタイルになるのですね。砂漠の中で生まれた宗教らしい設営ですが、「空間を拝む」という考え方は、どこか禅の境地にも似て、「ああ、これを見られてよかった」と思いました。
一方でイスラム教徒は決まった時間に(1日5回)聖地メッカの方向に向かって拝む…という決まりになっているので、どこにいてもメッカの方角がわからなくてはなりません。下の写真はドバイのEXPO会場(跡)のホテルの一室。天井の隅にメッカの方角がわかるシンプルなアイコンがついています。床には「ひれ伏す」だけの空きスペースが必要になります。
最近日本でも空港などには置かれるようになってきましたが「礼拝室」が各地下鉄の駅にもあったりします。いわば公共施設です。
偶像がなく、モスクは祭壇がなく「空間」が主役で、聖地の方角は日常的に意識され…つまりイスラム教は「抽象概念」に強く依拠した「新しい宗教」の側面を持っているのだなと感じました。
やはり旅は、出てみないとわかりません。新しい現代生活の中にも多様性がある…という発見は、世界ニュータウン巡りの面白さと通じるものがありそうです。
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