足の問題(ひろしま西風新都)

初期の千里ニュータウンは「駅が遠くて未舗装の道がぬかるんで長靴で…」と語り伝えられていますが(僕その状況覚えていますが…)、この広島のニュータウン「西風新都」ではどうでしょうか?
まず、日常の足はクルマです。アストラムラインという新交通システムが町の下まで来ていますが、市街地との間に横たわる山をぐるっと大回りしていて通勤には…?直行路線が計画されているようですが、財政問題が…。
しかもこの駅からニュータウンの住宅地までは、1~5キロ程度も坂を上らなくてはなりません。アストラムラインは谷底を走っていて、住宅地は谷を挟む丘の上に分散して展開しています。一方バス便は市の中心部まで頻繁にあり、2001年に開通したトンネルを通れば15~20分程度で直行できますから、駅まで歩いている間に着いてしまいますね。東京や大阪と違って、地方都市ではニュータウンに限らず、バスを含む「クルマで通勤」「クルマでおでかけ」が常識なのでしょう。
…でもこれ、今はいいけれど、高齢化したらどうするのでしょう…?
千里ニュータウンはモータリーゼーションの過程で設計されたため、「クルマ対応」に関しては良い意味でも悪い意味でも中途半端なところがあります。道はやたらと広いが駐車場はすぐに足りなくなり、生活の用事は「徒歩で足せる」ことが原則になっています。
ところが後続のニュータウンになると、もっと徹底したクルマ対応が進み…逆に言うと「クルマがなくては買物にも行けない」設計が多く見られます。名古屋の高蔵寺ニュータウンなどでは、「カーポートは各戸2台分」が標準設計のようでした。住民が若いうちはいいんですそれでも…。でも70歳になったら?80歳になったら?…しかも坂!郊外は坂が多い!「車椅子を置くと転がりだしてしまう」というのは笑えない冗談です。かつニュータウンは一挙に開発されて同世代の住民が多く入るため、普通の町よりもある時期に来ると高齢化が一挙に進む…という特徴が明らかになってきました。
高齢者が多くなり外出が難しい町…となると、町自体の人気がなくなることにもなりかねません。つまりクルマ社会になってから造られたニュータウンは、住民がまだ若いうちに「歩いて暮らせるまちづくり」「公共交通機関の維持」を真剣に考える必要があります。
千里ニュータウンはどんなに遠くても駅から5キロも離れた住宅はありません。クルマ社会に対応しきらず、歩いて暮らせることを基本にした「中途半端な設計」が、いま超高齢化が進行しつつ、まだしも救いになっている部分があります。
西風新都、いいニュータウンだと思うのですが、わざわざ新設したアストラムラインが町の基幹交通に全然なっていないところだけは、なぜこんな設計にしたのか、大きな疑問が消せませんでした。

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