あえてそのニュータウンの名は秘す。その町は丘の中腹にあり、下から順に一丁目二丁目…と丁目が上がるにつれてかなり急な斜面を住宅街がのぼっていく。

ここまではよくある話。これはクルマが運転できないととても暮らせないな…と思いながら五丁目までのぼった先に、幹線道路から分かれてさらにのぼっていく脇道がある。分岐点には監視所のような小屋がある。地図を見ると、さらに上に六丁目があるではないか。入口はこの1ヵ所。これは匂う。クルマを脇道に進め、さらに急な坂をのぼりきると…はたしてそこは天空の豪邸街だった。

急坂の上のさらにノリ面の上に、ピロティ構造で空に持ち上げた地球防衛軍のペントハウスのような白亜の邸宅が浮かんでいる。眺望を手中に収めるように、前面は一面のガラス張り。ふりかえって息を呑む。○○平野がミニチュアのように見おろせる。夜景は宝石をちりばめたようだろう。

…ニュータウンめぐりをしていると、ときどき不思議な空間に迷い込む。眺望だけを友にしたようなあの豪邸街の住人は、孤独なのか、幸せなのだろうか。

この投稿は2014年9月3日にfacebookに投稿した文章に加筆したものです。

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