ふつうの二階建(愛知・桃花台ニュータウン)

桃花台ニュータウンの中でも比較的開発が早そうな地区の「ふつうの二階建」(推定1980年代初頭)。
開発が新しい地区の凝った街区を見たあとだと、この「ふつうさ」がホッとします。でもこの家にも時代はちゃんと反映されています。
1.二階建だが総二階建ではない。
1960年代、千里ニュータウンの開発が進んでいた頃には、ほとんどの戸建は平屋で、二階建の家はそれだけで「豪邸」でした。ニュータウンは都心に比べて区画割がゆったりしていて、まだ土地も安く、二階建にしてまで土地をいっぱいに活用するという発想はなかったからです。一方、土地が高騰した1980年代後半以降には、高くなった土地を少しでも活用しようと(逆に言うと室内空間を確保しながら少しでも土地を節約するために)、戸建住宅は総二階建が主流になりました。この間の時期(1970年代~80年代初頭)に造られたのが「一部二階建」の構造です。
2.石垣+生垣
桃花台ニュータウンでは、開発が古い地区でも新しい地区でも、生垣を使ってなるべくオープンに庭を造ることが推奨されたようです。このお宅は伝統的なお屋敷風の石垣を取り入れつつ、全体にはフラットな造成になっています。生垣の手入れも美しく保たれていますね。
桃花台ニュータウン、新交通システムの廃線という予備知識から入ったので、ニュータウンの影の部分を見に行くような気分が少しありましたが、街区の造り方や緑の取り入れ方にいろいろ工夫が凝らされた特長のある町でした。バブル前後期、「ふつうが贅沢」という日々を日本が送っていた頃の空気を感じました。高齢化もまだ進んでいず、ニュータウンとしては「安定期」の町と言えるでしょう。またいつか、今度は住民の方に案内していただいて訪れたいと思いました。
次回からは「山の中の豪邸街」、岐阜・可児(かに)の桜ヶ丘ハイツをレポートします。

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コメント

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  • コメント (2)

    • Tek
    • 2020年 12月 14日

    コロナのせいでサイクリング仲間と集まることもかなわず、桃花台を単独で訪れてみました。新交通の高架が完全に撤去される直前でした。桃花台西駅と駅前の地区センターのさびれた感じは泉北と変わらず何ともいえない雰囲気でしたが、全体的には思ったよりは子供が多く、活気がある印象を受けました。

      • 奥居武
      • 2020年 12月 16日

      桃花台はまだ比較的新しく、いい時期に造られていますからね。新交通がはやばやと撤退したので先入観を持ってしまいがちですが、中京圏ではもともとクルマ通勤の比重が高いので。

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