宅地に農地(横浜・港北ニュータウン)

港北ニュータウンでとても面白いと思ったのは、戸建区画の中に忽然と農地が混ざっていることでした。
とりたて野菜・直売と自販機の横の看板に書いてあります。wikipediaの記述によれば、港北ニュータウンでは千里はじめ多くのニュータウンでとられたような全用地買収ではなく、「換地」という手法で地権者と土地を交換しながら事業を進めたとのこと…そのため、宅地内に農地が生まれたのでは?と思ったのですが…。
宅地の中にぽつんと農地があって、耕作しにくいんじゃないか?とか、臭いは問題にならないのか?とか、この規模で収入源になるんだろうか?とか、いろいろ勝手に想像してしまいましたが、もともと港北ニュータウンの一帯は首都圏の近郊農村として機能してきたところですから、町を開発するときに土地の記憶を塗り潰してしまうのではなく、それを取り込む形で共存を図る…という方法は、賢明な手法ではないか?と思いました。港北ニュータウンの計画では、農業は排除するものではなく、計画の一部として位置づけられたようです。
農作物にとって一つ重要なことは「鮮度」ですから、大規模化して、海外に移転して、冷蔵して運ぶ…だけが現代農業ではなく、消費地に近い場所に農地があることは、十分アドバンテージになるわけです。(千里の農業も、ニュータウン開発前にはそのような位置づけを持っていました。)
人口増の時代には、農地を宅地に転用し、農業を海外移転することが政策的に誘導されました。食料を輸入することは、土地を輸入することと同じ効果があり、その結果、日本の食料自給率はどんどん低下してきました。しかしこれから日本の人口は減るのだとすると…?いつか(遠くない将来)余った宅地を農地に再転用するときが来るのかもしれない…宅地と農地が混ざっていてもいいじゃないか…と、そんなことを考えました。
よそのニュータウンを見ていると、たまに「ありえない!」と思い込んでいることが、意外と「それもありなんじゃないか?」と発見させられることがあります。

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