吹き抜けの思い出(千里南地区センタービル)

互い違いのファサードが印象的な千里南地区センタービルの中に足を踏み入れてみました。
入居開始から1970年に千里中央ができるまで、南千里は千里ニュータウンの「核」であり、住民の生活を支えるいろいろな機能が、このビルには詰まっていました。ニュータウンで唯一の銀行だった大和銀行千里支店、吹田市の新千里山出張所、電話の取り付けを申し込む電電公社大阪山田局の出張窓口、分譲住宅の抽選も行われた千里開発センター…ロビーには町の完成予想ジオラマも置かれ(このジオラマの小型版は現在、吹田市立博物館にあります)、大人にも子供にも未来都市の夢をふりまいていました。カルチャーセンターなんて言葉もまだなく、公民館もなかった頃、ホールでは料理などの文化教室や体育教室も開かれていたようです。
しかし当初から物販店は入っていなかったため、どこかしら大人びた別世界をかもしだしていたような記憶があります。その中に静かに置かれたジオラマが、また子供心にわくわくしました。「へぇ~、全部できるとこんなふうになるんだ!」
この建築は村野藤吾さんという有名な建築家が手がけたため今あらためて注目されていますが、私の記憶では、オリジナルの内部はもっと吹き抜け部分が大きく、広々としていたと思います。当時の記録映像では天井の照明は今と同じなのですがやはり空間が大きく、2階か3階のフロアをあとから継ぎ足したのではないでしょうか。子供だったから…というだけじゃなく、今のように細かく区切った「せせこましい」フロア構成ではなかったと思います。内部の印象が、今とかなり違うのです。
吹き抜けの1階から2階には、当時はまだ少なかったエスカレーターが東西方向にありました。しかしこのエスカレーター、いつもカバーがかけられていて動いているのを見たことがありません。「えらい人が来た時だけ動かすのよ!」と母が文句を言っていたのを覚えています。
つまりその…外観は当時のニュータウン住民誰もに親しまれた建物だったのですが、中はいささか近寄りがたい「お役所風」でもあった…そんな両面性を持った建物だったと言えるでしょう。

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コメント

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  • コメント (16)

    • pigmon
    • 2009年 2月 26日

    今から40ン年前、オルガン教室の発表会があったホールは、ここじゃなかったのかな・・・。
    直線で構成されたこんなデザインをみると(はじめて見る建物でも)なつかしさで胸がいっぱいになります。そういえば、小学校の建物の中にもこんなかんじの空間がありました。

    • 奥居武
    • 2009年 2月 27日

    「ニュータウンは直線の町」ということは、ニュータウンを研究しておられる西川先生が以前おっしゃっていたことですが、それが「なつかしさ」につながるところがニュータウン育ちらしい感想ですね。ニュータウン内の学校のデザインはこれがまた一校一校工夫されていて(そのためにメンテナンスが大変らしいですが…)取り上げる価値十分なのですが、簡単に撮影に入れないところが泣き所です。吹き抜けやピロティは、60年代モダンに欠かせない要素と言えるでしょう。

    • 奥居武
    • 2009年 2月 27日

    ああそうだ。「オルガン教室の発表会」の記憶を確かめるのにちょうどいいイベントが、今週土曜日にありますよ。
    http://senrinewtown.main.jp/wordpress/20090226/230004/

    • tcp1pp
    • 2011年 8月 20日

    竣工当時の南センタービルの図面と写真が、雑誌「新建築」64年8月号に掲載されていました。吹き抜けの様子は今と変わらないようで、フロアの増築もなさそうです。写真には1階郵便局前のロビーが写っていて、エスカレーターもばっちりわかります。
    阪急オアシス新千里山店については、引き続き調査してみます。

    • 奥居武
    • 2011年 8月 20日

    tcp 1ppさん、「新建築」に出ていましたか。ありがとうございます。どうして今と印象が違うのかなあ?床じゃなくて壁の仕切りを増やした形跡はありませんか?新千里山駅は1963年8月の使用開始です。…と検索していたら、すごく小さいですがこんな図面が出てきました。
    http://www5f.biglobe.ne.jp/~rajomon/sub6006.html
    阪急オアシス新千里山店は、今のクリエテ阪急より小さかったのかもしれません。

    • tcp1pp
    • 2011年 8月 20日

    今のクリエテ阪急のおそらく1/4くらい、スーパーというよりコンビニに近い床面積ではないかと。「青春のお通り」で、買い物ロケがなぜ阪急オアシスでなく藤白台近隣センターなのかも
    なんとなく想像がつきます。おそらく市場の雰囲気で撮影したかったのではないかと。余談ですが、「青春のお通り」のラストシーンの噴水の場所、どこだかわかりませんか。25年探し続けていますが未だわかりません・・・

    • 奥居武
    • 2011年 8月 21日

    「青春のお通り」のラストシーンの噴水は、あれはもう千里ニュータウンじゃないと思います。ロータリーの真ん中に噴水があっていかにもニュータウン風ですが、あんな場所は千里ニュータウンにはありません。東京の撮影所の近所とか?この映画、千里以外にもかなりいろんな場所でロケしていますよ。

    • tcp1pp
    • 2011年 8月 21日

    千里ニュータウン物として(笑)、「ホームレス中学生」「青春のお通り」と並んで「追う男」も欠かせません。銀行の社宅をどこでロケしたのか探しています。

    • 奥居武
    • 2011年 8月 21日

    「追う男」は初めて聞きました。これでしょうか?
    http://www.tsutaya.co.jp/works/10010534.html

    • tcp1pp
    • 2011年 8月 21日

    そうです、NHKドラマ人間模様「追う男」。
    主演・松田優作。懐かしいセルシーや千里サンタウン、千里ニュータウンや大阪市内が出てきます。昭和61年NHK大阪放送局製作。藤白台でロケはしていませんが、必見ですよ。

    • 奥居武
    • 2011年 8月 21日

    え、え、えー!松田優作が千里ニュータウンに…ニュータウンはサスペンスの舞台にぜんぜん合わない感じですが、「平和な日常」の象徴としては小説などでも登場するので、コントラストをつけたかったのでしょうか…?いずれにしても貴重です。1980年代の千里の記録って、意外と少ないのですよ。町が安定していて「いま撮らねば!」という気持ちになりにくかったんだと思います。

    • tcp1pp
    • 2011年 8月 26日

    南千里駅の改札が駅下から北側に移動したのは、千里タイムズ1970/2/13号によると住民からの公害対策・交通事故対策の要望の結果だそうです。改札が駅下だった頃は歩道橋がなく、交通事故が多発したこと、公害対策はバス・タクシーの排気ガス対策でしょうか。1969年末に移転予定だったものが工事が遅れ、3/1にずれ込んだとあります。跡地はボーリング場予定、というのも時代を感じさせますね。

    • 奥居武
    • 2011年 8月 27日

    それは興味深い記事ですが、住民パワーの成果だとするのは千里タイムズ的視点ですねえ…。南千里から北はもともと北千里に伸ばすか(大阪府案)千里中央あたりを通って桜井に伸ばすか(阪急案)両論があり、とりあえずどっちでも(両方でも)行けるように2面4線で駅を設計して分岐の手前の南半分だけで開業した…南センターの津雲台側は買収に手間取ったという話も読んだことがあります。つまり最初から佐竹台側の設備は「暫定含み」だったのではないか?プランとしていかにも中途半端に思えますし…。北千里への延長が決まったあとも、千里トンネルをトンネルにして公園の一体感を守るか(府の要望)工費が安い切り通しで行くか(阪急の要望)綱引きがあったと何かで読んだことがありますが、初期のプランはそういったいろいろな「ブレ」があるのも面白いところです。

    • 奥居武
    • 2011年 10月 02日

    「追う男」、買って見ました。公団住宅のロケは、いま建替中の桃山台でやっていますね。社宅のロケもその周辺だったでしょうか…?

    • tcp1pp
    • 2011年 10月 02日

    瀬木が神津家の社宅を訪ねるシーン、
    何度も繰り返し見ています。銀行の社宅をそのまま使ったのかと思い、当時の住宅地図もずいぶん見てみましたが、未だロケ地の特定には至っていません。千里サンタウン専門店街が懐かしいですね。

    • 奥居武
    • 2011年 10月 02日

    やはり、平和で、それゆえに息づまるような世界として描かれていましたね。この時代のひとつのニュータウン観として、貴重な記録だと思います。当時人気絶頂だった松田優作と烏丸せつこが(かなりみっちりと)ロケに来ているのですから地元の人たちは覚えていないはずがないだろうと思うのですが…

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