アパート・キッズの物語(韓国・果川新都市など)

(2019年11月に訪問した時の記録です。)2019年12月6日付12月30日付、2020年5月2日付~の2シリーズで書いてきた韓国レポートも今回が最後です。ソウルの団地・ニュータウンでも、地方の炭鉱都市でも、思い切りよく区切りをつけてばんばん建て替えているような韓国ですが、「そこで育った人たち」には、やはりその急激な変化には感懐もあるようです。

写真は、ソウル近郊の果川新都市をベースに活動している「アパート・キッズ」(団地育ちの人たち)研究者が団地建替に際して制作したブックレット。団地の思い出の物語と、四季の美しい情景が大変高いレベルでまとめられています。どんどん(千里も真っ青なぐらいの勢いで)建て替えているからと言って、「ふりかえらない」わけじゃないのです。

…しかしこれは民間の活動であって、このような「草の根」の人たちが何かをしなければ、やはり埋もれていってしまう記憶なのかもわかりません。

ブックレットの表紙についている丸に家の形のロゴは、日本のURに相当する韓国土地住宅公社(LH)の前身、大韓住宅公社のロゴのようです(現在のLH のサイトを見に行っても、このロゴは見当たりません)。まさに日本住宅公団の「マル住マーク」のような、郷愁を誘う記号なのかもわかりません。

ここで急にドライになって考えると、わからないのは、韓国は戦後、日本以上の勢いで人口増加し、かつ都市集中してきましたが、出生率は「世界最低レベル」まで落ち込み、この先激しい人口減少が決定している…ということです。

こんなに激しい勢いで建て替えて(高層化して住戸を増やして)、この先急激にだぶついたりしないのだろうか?…ソウルへの集中が相殺するという計算なのか?…いやいや、韓国という国は北朝鮮と隣り合っていますから、この先、その関係がどうなっていくのかも、わからない要素が多すぎます。

この2019年11月の訪問からコロナ禍までのわずかな間に、映画『パラサイト』が大きな話題となりましたが、あの映画に描かれた「半地下の世界」と「超豪邸」の間には、多くの「中流の人たち」がいて、その部分を僕は見てきました。

「韓国は政治でガラっと変わる」「政権が変わればすべて変わる」とも多くの人から聞きましたが、市場原理ではなく別の力学で動いている部分が大きいのかもわかりません。

機内食を食べる暇もないほど、すぐに着いてしまう韓国。しかし「隣人」というものは、不思議なものです!見ていないニュータウンだらけだし、まだまだ勉強しなくては。早く再訪できるようになることを願っています。

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