乗継だけに徹した高蔵寺駅(愛知・高蔵寺ニュータウン)

高蔵寺ニュータウンが千里ニュータウンと一番違うなと思うのは、交通手段のあり方です。
通勤もクルマで都心まで行ってしまう人が多い高蔵寺ニュータウンでは、相対的に鉄道駅の存在感が重くありません。JR高蔵寺駅という駅はあるのですが、そこはニュータウンの入口で、ニュータウンの中心にある(千里中央のような)ショッピングセンターは、駅と全く無関係に立地しています。こういう関係は駅を中心に町を造る東京や大阪のニュータウン計画ではあり得ないことです。広島のニュータウン、西風新都でも、新しく新交通システムを建設しておきながら、町の中には鉄道が入ってこない位置関係になっていました。
JR高蔵寺駅から名古屋駅までは、閑散時でも1時間に8本の電車があり、十分「使える」本数でしたが、ニュータウン住民は(駅が離れているので)必ず駅からバスに乗らねばならず、このバスが高いのだと高蔵寺出身の後輩から聞きました。
JR高蔵寺の駅前には、買物ができるような店もわずかしかありません。駅前広場はバスのりばと自家用車の降車場があるだけで、そっけない地下道(写真)が駅と広場を結んでいるだけです。それは見事なほど人を溜めない、乗継だけに徹した構造でした。近くには大きな駐車場も見あたりませんでした。奥さんが自家用車で出勤のご主人を送りに来た場合、停める間もなくポンとドロップして去っていくしかない、そんな駅前の構造でした。
日本の中で首都圏と京阪神以外では、いまや通勤電車の存在が薄いこのようなスタイルのほうがむしろ普通なのかもしれません。しかし高齢化が進んだ場合と環境の観点から、町の中心に駅を置かない構造はどうなのでしょうか…?廉価な公共交通機関のネットワークを構築維持することは、人口減少時代に「生き残れる町」の重要なポイントになるような気がします。

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (2)

    • M YASUDA
    • 2014年 7月 29日

    45年前、私は高蔵寺ニュータウンに住んでいました。
    そして、1998年久しぶりにここを訪れました。
    高蔵寺駅、懐かしいです。

    • 奥居武
    • 2014年 8月 06日

    コメントありがとうございます。今年の春にも高蔵寺には行きました。緑が大きく育っていましたよ!

好評発売中!

CITY LIFE刊のムックガイド。「歴史文化」「まちづくり」の取材が丁寧で大充実。「北千里を歩く象」の記事で協力しました。こちらから購入できます。

好評発売中!

樹林舎刊の写真集『吹田市の昭和』の千里ニュータウン部分を中心に、コラム執筆や写真のアレンジ、事実関係の確認などを担当しました。限定1,500部。書店でお申し込みください。

好評配布中!〔無料〕

千里ニュータウンの最新状況がわかる「千里ニュータウンマップ2018」の制作をお手伝いしました。このマップは南千里駅前の「吹田市立千里ニュータウン情報館」で配布しています。2013年版も在庫があります。

好評発売中!

吹田市立博物館とパルテノン多摩の2018年共同企画「ニュータウン誕生」の展示・図録制作をお手伝いしました。図録購入(吹田版)はこちら。多摩版はこちら。(内容は同じです)

アーカイブ

ページ上部へ戻る