町の継続・再生には「集合的記憶」が必要だ

私が大阪市立大学に提出した修士論文の話の続きです。(大阪市立大学は2022年度の入学生から大阪府立大学と統合されて大阪公立大学になりましたが、私はそれ以前に入学していたので修了まで大阪市立大学の所属でした。伝統ある大学名の、ほぼラストランナーです!)


「集合的記憶」という言葉があります。これは「個人の記憶」を超えて、ある集団が共通に持つ記憶のことで、町や地域にもあてはまります。それは「人々の絆」や「安心感」といった方向にも働きますし、「束縛感」「しがらみ」といった方向にも働きます。

記憶は無形のものですから、しっかりとお互いに共有して確認するためには「表象」される必要があります。「表象」は「モノ」「コト」「語り」3つの形態があります。伝統のある町であれば、「モノ」は、たとえばお城、「コト」は祭り、「語り」は伝承などを思い浮かべると、わかりやすいです。そういった集合で共有される表象の重要性は、それらがダメージを受けた時に、強く意識されます。たとえば、首里城の消失。震災による祭りの途絶。人口減少による語り手の流出…。地域社会の存続に必要なのは、日常生活の必要性だけでは足りないことがわかります。

ニュータウンという、歴史伝統の根が浅く、各成員の地縁的な共通性が高くない地域社会で、その「表象化」はどのように行われてきたのか。あるいは、行われようとしているのか。各地のニュータウンでは、半世紀を超える歴史の中で、それぞれにあてはまる多様な例が見出されます。

「モノ」の例
・定点撮影プロジェクト(多摩ニュータウン)
・泉北レモンの街ストーリー(泉北ニュータウン)

「コト」の例
・千里キャンドルロード(千里ニュータウン)
・SENBOKU TRIAL(泉北ニュータウン)
・多摩市若者会議(多摩ニュータウン)

「語り」の例
・『長ぐつと星空』(筑波研究学園都市)
・『ニュータウン再生』(千里ニュータウン)
・『オーラル・ヒストリー 多摩ニュータウン』(多摩ニュータウン)
・「象のひろば」「自動改札機」(千里ニュータウン)

ニュータウンは当初、「全員がよせあつめ」という人工的な地域社会からスタートします。社会集団としてのまとまりである「凝集性」に乏しい状態です。しかし半世紀にわたって地域住民や関係者から「モノ」「コト」「語り」の3形態で表象化されてきた集合的記憶は、それぞれに人たちに意識化されることで、希薄だった凝集性を継続的に構築し、補填、さらに蓄積する機能を地域社会で発揮するようになります。この「凝集性の構築と補填、蓄積」が「ニュータウン・アイデンティティ」を強化し、人と町が世代交代しても集合的記憶の継承を可能にするのです。ニュータウンという地域社会では「地域の記憶の継承」をより強く意識することで、存続の基盤を強化することができます。

凝集性をより良く発揮させるために大切なポイントは「集団の魅力」。集団の魅力の一つの要因は、成員間の対人魅力の高さに依存します。人口減少時代を迎えた日本のニュータウンは、人口の維持にとって絶対的に有利な立地条件ではなくなっています。相対的に有利な条件ではなくなった集団の凝集性は、他集団への排外性や自集団の独善性に走ってしまう危険性があります。

ニュータウンの住民・関係者は、自らの地域社会が排外性や独善性に陥ってしまわないよう、自覚し続けることが必要です。


…という内容。私は職歴が広告のコピーライターだったので、論文作法には苦労しました!しかし60年弱のニュータウン居住歴、千里や各地のニュータウンの方々から伺ったお話を慎重に丹念に注ぎ込みました!お世話になった皆様に心からお礼申しあげます。

この論文は大阪公立大学の図書館に行かないと読むことができませんが、違った形で…このブログや地域の活動などで…大好きなニュータウンに還元していきたいと思います。(希望される奇特な方がおられれば、リクエストいただければデータファイルでお送りします。)

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