今を生きている町(イギリス・レッチワース田園都市)

(2013年8月に訪問した時の記録です。)まちびらきから110年、レッチワースの住宅地は今も少しずつ拡張を続けています。「最新のエリア」として案内していただいたのが、ここ。2階建(一部3階建)の連棟式のテラスハウスで、囲み型配置になっていて、囲まれた中の芝生で子供が遊べるようになっています。屋根には太陽光パネルが載っていたりします。

町は、プレミアムがついて「高級化」してしまうと、初心と異なって若い家族がどうしても入ってきにくくなり、高齢化していきます。財団が不動産を持って賃貸で運営するならば賃料を抑えてコントロールできそうなものですが、やはり「市場」を無視するわけにはいかなくなるのでしょう。

そこで価格を安く抑えようとすると、集合住宅化し、家はコンパクトになっていきます。それでも「田園都市らしさ」を今の時代に合った形で維持しようとすると、このように「コモン(共同利用地)を生かす」設計になっていくのではないでしょうか。木が幼いのは致し方ありません。

財団の方の説明からも、「若い家族に来てほしい」という言葉は何度も聞かれました。「大学を誘致したい」という言葉も聞きました。レッチワースは世界の郊外住宅地計画のエバーグリーン的存在ですが、「今を生きている」町でもあるのです。

中心部の公園では、子供を遊ばせやすいように、近年リニューアルしたらしい水場もありました。日本人はことさらレッチワースが好きらしく、つい「理想像を固定化」してしまいがちです。しかし逆にレッチワースも悩みながら「今を生きている」ことがわかって、親しみもわいたし、ああ、やっぱり町は実際に来てみないとわからないなと痛感しました。次回からは「2つ目の田園都市」ウェリンに行ってみましょう。

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